2017年09月09日

感想:「なまくら刀」公開100周年記念祭 at 京都国際マンガミュージアム

2017年7月、100年前に作られたという日本初の国産アニメ「なまくら刀」の上映会に行ってきました。

今年は国産アニメーション100周年ということで、NHKで「ニッポンアニメ100」など興味深く見ておりましたが、本物のフィルムによる再現上映は、またとない貴重な体験でした。

現存最古の国産アニメーション映画『なまくら刀』を含む戦前期のアニメーションに、活動写真弁士と生演奏をあてた再現上映と、アニメーション史研究の第一人者によるトークイベント。

「にっぽんアニメーションことはじめ〜「動く漫画」のパイオニアたち〜展」関連イベント
『なまくら刀』公開100周年記念祭

京都国際マンガミュージアム


■「なまくら刀」活弁上映会
日本でアニメーションが作られた最初期は、なんと大正時代。
その黎明期の作品の多くは失われているのですが、近年、大阪で奇跡的に発見された作品が「なまくら刀」。
その作品の記念すべき日に行われた、当時の雰囲気を再現した活弁上映会でした。

活動写真弁士さまの実に楽しげな言い回しと、映画伴奏者さまの生演奏によるかけあい。
さらに手回しの映像も緩急があり、三者によるライブ感に溢れる上映会
きっと観客も大いに笑い盛り上がったことでしょう。今の映画体験とはまた違う世界がそこにはあったようです。

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こちらはその映写機(撮影可でした)
映像研究家の先生が四天王寺の骨董市で発見したそうで、先生自ら手回しの上映でした。

これらは当時「まんが映画おもちゃ映画」と呼ばれ、なんと!ご家庭の映写機で鑑賞されていたのだとか。(映画館のフィルムもバラして販売されていたとか)
大正時代にホームシアターがあったとは、戦前の日本はやはり豊かだったんですねぇ。

上映会では「なまくら刀」の他にも、当時の子ども向けアニメーション映画(おもちゃ映画)を再現したものを幾つか見せて頂きました。
印象に残ったのは、浦島太郎や一寸法師など誰もが知っている昔話をベースにした創作物語で、そこになぜか忠臣蔵や加藤清正なども登場して、当時の子ども達のヒーロー大行進というところでしょうか(ある意味、現代の二次創作ものと近い構図ですね)
子どもが主人公だけど潜水艦とか軍艦とかのお話しとか、これが大正・昭和の男の子の憧れなのかな、と。(ソレイユ的な少女むけのまんが映画もあったのかな?)

そうそう「なまくら刀」で何が驚いたかというと、想像してした以上によく動くんです。
なにしろ最初期のアニメ、きっと紙芝居みたいと思うじゃないですか。
僕らが子どもの頃に見ていたテレビまんが(いわゆるリミテッドアニメーション)のほうがよっぽど紙芝居…(´ω`)
日本最初期のアニメは、アメリカ等の進んだアニメーション映画を研究してつくられていたからのようです。


■日本アニメーション文化史
日本の古いアニメ、というとなんとなく虫プロの「鉄腕アトム」と思っておりましたが、実はそれ以前に豊かなアニメーションの時代が存在したという事を知りました。

明治・大正時代、大衆の娯楽として大人気だった映画。その幕間などに上映されていた短編アニメーション(外国産)が徐々に人気に。
そこで国産のアニメーションを作ろうという動きが映画会社であり、当時の画家や人気漫画家に声がかかって研究が始められた、という経緯。
彼らは当然専門の教育を受けていないわけで、独自の研究と工夫でつくったということだからすごい。
(因みに漫画も当時は戯画やぽんち絵といって今とはちょっとイメージが違います)
この辺りの黎明期のお話しが、専門家さまによる講演と、展示(にっぽんアニメーションことはじめ〜「動く漫画」のパイオニアたち〜展)で詳しく興味深かったです。

彼ら先駆者の努力により、昭和初期にはアニメーション制作がブームになったそうですが、そこで語られ期待されていた事が国策的な事柄というのが時代を感じます。
アニメーションを含む映画がプロパガンダと結びつき、戦時下の「桃太郎の海鷲海の神兵」に繋がっていったのでしょう。

戦後のアニメーションでは「東洋のディズニー」を目指して設立されたという「東映動画」が素晴らしい名作を残していると聞きます。
手塚治虫先生以前のアニメや漫画にもいつか触れてみたいなぁと常々思いつつ。

そう、その手塚治虫先生ですが、今回の展示で興味深い、マンガの一場面が紹介されていました。
今まで先生が影響をうけた先達の漫画のキャラクターが一堂に会している見開きが何かの作品であるそうで。
そこに松本零士先生の注釈〜未来へ繋がっていく・バトンを託していくもの〜とありまして、これがマンガという文化なのだなぁと印象深いものでした。

追記:
今回記事を書くにあたって調べていたら、こんなコンテンツみつけました。
日本アニメーション映画クラシックス
祝!国産アニメーション生誕100年。日本の初期アニメーション映画を公開中!

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2017年01月17日

レポート:THE 世界名作劇場展

子どもの頃、一度は目にし感動の涙を流した人は多いことでしょう。
アニメ「世界名作劇場」は昭和の子ども達の日曜日の夜の定番でした。

私も子ども心に焼き付いています。
アルプスの壮大な風景とチーズとパン。旅人に厳しく時に優しい人々、南の島の不思議な生活。
疾走する馬車とテーマ曲、苦難の末天に召させる少年達、ミシシッピリバーの冒険譚…。

お話しは忘れてしまったけど、描かれた大自然の風景や、生活する人々が、まるで本当に見た事のように思い出せます。

日本の子ども達に、深い感動を作ってくれた「世界名作劇場」は、日本アニメの宝物だと、常々思っておりました所、
全シリーズを一望できる「THE 世界名作劇場展」が大阪に巡回してきましたので、懐かしんで参りました。


■THE 世界名作劇場展


「THE 世界名作劇場展」(大阪・阪急うめだギャラリー 2016.12)※開催終了
「フランダースの犬」、「あらいぐまラスカル」、「赤毛のアン」など貴重な資料を含む約300点を一挙公開

制作スタジオ・日本アニメーションが創業時から目指し続ける”世界中のこどもたちと家族に向けた、心を豊かに育むアニメーションづくり”。夢と感動がいっぱいの、心温まる作品を生み出してきた制作過程にスポットを当て、アニメーションの礎を築いた”職人”たちによる、貴重な制作資料や原画などを展示します。


世界名作劇場展.jpg
※イベント会場 フォトスポット

世界名作劇場は、日本アニメーション社が制作した一連のテレビアニメシリーズ。世界で親しまれてきた小説・童話などをアニメ化。フジテレビ系列で、主に毎週日曜日の夜に放送されていました。

展覧会では、日本アニメーション40年の仕事、という事で、
フランダースの犬(1975年)以降のおおよそ26作品を中心に、設定画や原画イメージボードなどを多数見ることが出来まして、あの深く印象に残っている自然豊かな風景は、スタッフが毎回ロケハンに出かけ資料を集め、美術スタッフが練り上げたものだったと分かりました。

展示されている多くは水彩や鉛筆で手描きされた絵。
私が見ていた頃、まだアニメではなく「テレビまんが」と呼ばれていた時代、セル画も一枚一枚絵の具で彩色していたと聞きます。
経年劣化など見受けられますが(素材として描かれていたものなので)手描きならではの味わいですね。
現在はデジタル化・CG化が進んだアニメの世界、もうこういったものはみられないのでしょう。

それにしても26作品というのは大変な数で、自分が熱心に見ていて懐かしめたのはごく一部でした、きっと多くの人がそうなのでしょうけど。それをシリーズ全てを俯瞰して一度に見渡せるというのは、なかなか無い機会だったように思います。

個人的には最もよく見ていた頃の、フランダースの犬(1975年)から、母をたずねて三千里あらいぐまラスカルペリーヌ物語赤毛のアントム・ソーヤーの冒険ふしぎな島のフローネ(1981年)が思い出深い事。

見てはいないのですが噂はよく聞く小公女セーラ、テーマ楽曲がアイドル歌謡に変わった愛少女ポリアンナ物語

近藤喜文さんのキャラクターデザインに魅了された、愛の若草物語が、この時期は印象深かい事。
Rp:この男がジブリを支えた。近藤喜文展

今風にいうとイケメン貴公子のお話し小公子セディ、ファンタジックな作画に魅了されたピーターパンの冒険、ジョディの飛び上がった三つ編みとキャラが印象的だった私のあしながおじさん

その他見た事はないけれど、なんだかとても名作な気がする作品が多数あり、きっと長い間に渡って、世界の多くの子ども達の心の糧になったシリーズなのだろうと想像しました。


■ところでハイジは?


大人視線では、高畑勲監督作品と宮崎駿氏のお仕事に注目していましたが「世界名作劇場」は、大変多くのスタッフ・クリエイターが関わっておられました。
実に沢山の人々の手で「世界名作劇場」の世界観は作られ、守られて来たのですね。

高畑勲氏と宮崎駿氏の名作といえば「アルプスの少女ハイジ」(74)なのですが…あれ?展示に無かったと気がつきましたか?
どうやら公式にはシリーズに含まれていないそうです。が、制作体制などは共通している部分が多いようです。

他にも70年前後には、ムーミン、アンデルセン物語、山ねずみロッキーチャック、ちいさなバイキングビッケ、みつばちマーヤ、くまの子ジャッキー、ガンバの冒険、そして未来少年コナンなど、海外を舞台にした名作アニメがたくさんあった事を思い出します。
別の流れですが、キャンディキャンディ、花の子ルンルン、ハローサンディベルといった、海外を舞台にした少女向け名作アニメもありましたね。

「テレビまんが」の時代、子ども達に向けて真剣にいい作品を届けようと務めた作り手がきっと沢山いらっしゃったんだろうなぁ。
また近々、世界名作劇場やこの辺りのお話しを掘り下げてお話ししたいと思っています。

月与志のカルチャー夜話 第七十九夜 〜テレビまんがと昭和:オールドスクール・アニメ03

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2016年08月29日

Rp:山本二三展 リターンズ at神戸ゆかりの美術館

国民的アニメスタジオ・ジブリの名作映画で、あの天空の城や、もののけの森を描いた山本二三さんの作品展です。ジブリの歴史的名作を支えた背景画を拝見して参りました。

山本二三展 リターンズ 〜天空の城ラピュタ、火垂るの墓、もののけ姫、時をかける少女〜

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展覧会をみて理解した所を述べますと、背景画とは…アニメーションに多くの情報を持ち込み、空気やムードを表現し、リアリティと世界観を構築するものだと感じました。

作品ごと年代順に並べられた背景画をみていてまず気づくのですが、背景画には主役が不在なのです。
例えば風景を描いた絵画でも、普通は絵の主役がいるものですが、これらの絵には主役が不在です、というよりも、主役はその上に重ねられるセルで描かれたキャラクターなので、アニメ作品になって初めて完成する、ということですね。

しかしながら、主役が描かれていないこれらの背景画にも、何か強く訴えかけてくるものを感じました。
主役あっての背景ですが、そこには背景(目にとまらない景色)としての主張(季節感・空気感・地域性・時間・ムード)がしっかりと描き込まれていて、アニメ作品の世界観や舞台の設計を担っていると理解しました。

それにしても確かにもののけの森は神がかっていましたね。
天空の城やもののけの森のファンタジックな世界が、とてもリアルに感じられたのは美術の力が大きいと思います。

じゃりんこチエでは、高畑勲監督と共に大阪の下町を実際に寝泊まりして取材したとか。
火垂るの墓(高畑勲作品)はさらにつっこんで、戦争前後の神戸を取材して、物語の舞台を空気ごと再現したのだそうです。

時をかける少女(アニメ作品)は、現代の日常を描いていても、時間の経過やムードがドラマティックでした。

物語の主役たちを生かすために必要不可欠な背景画。ちょうど、映画の美術や、演劇の舞台装置に近い存在かもしれませんね。

最近、スタジオジブリで活躍されたアニメーター近藤喜文展を見ておりますので、あわせて理解が深まりました。
Rp:この男がジブリを支えた。近藤喜文展

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なお、六甲アイランド内にある神戸ゆかりの美術館は、神戸ファッション美術館の隣にあり、ファッション美術館ライブラリーという施設がありました。
国内外のファッション関連の蔵書や20世紀初頭からのファッション雑誌のバックナンバーがあり、関西ではすごい所ではないでしょうか。

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