2019年03月04日

感想:大亦観風『万葉集画撰』を辿る at奈良県立万葉文化館

地元奈良の明日香村に、奈良県立万葉文化館という施設がございます。
日本最古の歌集『万葉集』をテーマにした文化施設で、特にこちらの「万葉ミュージアム」では個人的に興味深い展示がよく行われておりまして、よく通っております。

IMG_7247.JPG

明日香村はどの季節に訪れても自然が美しく、穏やかな風景が広がってほっとできる大好きな土地です。
花と風景のスケッチをするようになってからは、万葉文化館の、万葉の草木を植栽したという庭園がお気に入りの一つです。

そして「万葉ミュージアム」は非常に広く、大きい規模の美術展示が地元でも見られるという、中南和地域の日本画好きにはありがたい施設ですね。

私の記憶に残っている中では、改装中の京都市立美術館から巡って来た「特別展 京都市美術館名品展 美人画100年の系譜 美の継承―万葉日本画へ続く流れ」にて、京都画壇の名作をたっぷり拝見、これはとてもありがたかったなぁ。

そして現代日本画家の三瀬夏之介氏の展示。巨大な作品群鑑賞は万葉文化館の広いスペースあったればこそ、でした。

定番の万葉日本画コレクションも、毎年の楽しみのひとつ。
Rp:すべて見せます万葉日本画〜風景〜at奈良県立万葉文化館

その他、万葉集とその時代をわかりやすく紹介する展示室や、情報図書館、ミュージアムショップ、調査・研究を行う万葉古代学研究所もある、とか。

近辺には古代ロマン漂う飛鳥の名所がありますので、巡り歩く拠点にするのにも良いですよ。古代の魅力に触れにぜひ一度訪れてみてください。

2001年9月15日に開館。“万葉のふるさと”である奈良にふさわしい総合文化拠点を設置の趣旨として整備され、古代文化の魅力を視覚的にわかりやすく紹介する。
奈良県立万葉文化館

IMG_8269.JPG


さて、やまと歌に興味を深めている今日この頃の私ですが。
墨絵アートてぬぐい〜2019早春・椿・梅・龍虎

「万葉集」の世界をもっと深めたい、という今の気分にぴったりの展示がございました。
以下、いつものノリの感想でプルンす(´ω`)

【大亦観風『万葉集画撰』を辿る】

画・書一体の美しい万葉画を拝見できると期待して行って参りました。
日本画家 大亦観風(おおまたかんぷう)氏が万葉学者と相談して内容を検討、じっくり構想を立てた後、日本全国の万葉縁の地を巡ってスケッチを重ね、昭和15年(1940年)完成させた、それが「万葉集画撰」(まんようしゅうがせん)でした。
冒頭では芸術性の高さを第一に考え、物語の挿絵や風俗画とは一線を画するものというような事が述べられていました。

恥ずかしながらよく知らなかった万葉集の世界を全七十一図の絵と書でひととおり体験。
大君が娘にコクる「名告らせね」の冒頭から、大和三山サンカク関係相争い、実は戯れの恋歌?紫野行き標野行き、天の香具山の衣はほすてふに非ずほしたり、不尽の高嶺は真白にそ、ラップ調のヲくララは今は罷ラム子泣くラム、大仏開眼、古代らしい大らかというか赤裸々すぎる愛の歌から、貧しさに負けた世間に負けたのフォークソング、海は死にますか山は死にますかの防人の歌まで、いろいろ違うけどだいたい理解しましたよ!万葉の世界(おい)

そんな調子で楽しく見ていたら様子が変わったのが展示のクライマックス辺り。
万葉集編者といわれる歌人大伴家持(おおとものやかもち)の長歌「海行かば 水漬く屍 山行かば 草生す屍 大君の辺にこそ死なめ かへりみはせじ」大和朝廷以来天皇家を守る武門の家柄、大伴氏らしい歌なのですが、これが先の大戦中に国民精神を鼓舞する国民歌謡「海行かば」として引用されたといいます。

そして最後の歌「新しき年の初めの初春の 今日降る雪のいやしけ吉事」を、皇室の繁栄を願う言祝ぎ(ことほぎ)として締めくくられておりました。万葉集画撰は紀元二千六百年記念行事として制作されたといいます、古事記と同じく、長く続く伝統的な文化にはこういった時代があったという歴史的事実を知っておく必要がありますね。

それはともかく、少し聞きかじっただけでは分からない奥深き万葉の世界。
せかっく奈良に住み、近隣に立派な施設もあるのだから、少しずつ作品とともに深めて行きたいなぁ。
まずは、万葉の花から。

おでかけスケッチ〜秋の草花

IMG_7251.JPG

2019年4月1日追記
新しい元号が「令和(れいわ)」と発表されました。万葉集由来だそうです。
典拠は奈良時代に完成した日本に現存する最古の歌集「万葉集」。日本で記された国書に由来する元号は確認できる限り初めてとなる。
万葉集にある歌の序文「初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす」(書き下し文)から二文字をとった。
〜朝日新聞ニュースより

早速「令和」をテーマにした作品を作りたいと思います。

月与志site
http://tsuyoshi-jp.com

Facebook Artist page「月与志」
http://www.facebook.com/tsuyoshi.art

tumblr
https://tsuyoshi-jp.tumblr.com/
posted by 月与志(tsuyoshi-jp) at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想:古典

2018年12月27日

感想:物語とうたにあそぶ at中之島香雪美術館〜市中の山居に憩う

師走の多忙の合間を縫って、大阪中之島の高層ビルの中にある、中之島香雪美術館を訪れました。
開館記念展part5「物語とうたにあそぶやまと絵和歌の優美な調和を感じてまいりました。

IMG_7924.JPG

普段は五重塔より高い建物のない奈良に居るので、都会に出てくるとなんだか居心地悪いのですがw
フェスティバルタワーという当世最新の塔に登ったら、そこには思いがけなく詫びた茶室が…。

IMG_7929.JPG

2018年三月にオープンした新しい美術館だけに、美しく上品な空間という印象。
超高透過ガラスと、暗めの照明設定で作品鑑賞に浸れるという狙いがあるのでしょう、歌と物語の世界をたっぷり堪能いたしました。

中之島香雪美術館 開館記念展「 珠玉の村山コレクション 〜愛し、守り、伝えた〜 」V 物語とうたにあそぶ


展示は絵巻と書跡が中心で、やまと絵と和歌の優れた作品が続々と。
この最近興味が高まっているジャンルでもう私的にドストライク!!

ぎゅーんと言魂がしゃうとするのです!
墨絵アートてぬぐい〜龍田川紅葉 


【フリースタイル和様書の世界】

まず最初に遭遇するのは藤原定家(小倉百人一首の撰者)の名高き小倉色紙
正方形に近い色紙にほぼ両端揃え、ひらがな等間隔、太め強めな印象の書風(定家様〜ていかよう)は、鎌倉武家の時代の書ということです。

やはり好きなのはズバリ平安朝のかなの雅
高野切れ(古今和歌集最古の写本・秀吉さんが高野山に伝えた事から)の(伝)紀貫之や、三跡 小野道風の、針金のようにシャープで柔らかい書跡にゾクゾク。

歌の作者の肖像と和歌を組み合わせた「歌仙図」がさらに面白い(江戸期以降は小倉百人一首のカルタなどでお馴染み)
漢字・仮名・変体仮名を自在に組み合わせて、濃淡や大小、疎密、行間の変化を立体的に考えてほぼ即興で書くという…
それがさらに人物絵と呼応するとかほぼレイアウトデザインの世界ですわ。

いわゆる散らし書きという感覚は日本独特の美で、本家中国の書ではまずありえないんだとか(そもそも仮名がない)
それにしても、この自由気ままな改行、配置、変形(かなを曲げたり伸ばしたり)とか…中世の宮廷人フリースタイル具合がはんパナいの!

最近変体仮名(へんたいがな)を少し解するようになりまして、すると暗号にしか見えなかった仮名がしっくり来るようになりまして…
そうなると逆に、平仮名(ひらがな)だけで書いたものはちょっと普通というか、物足りなくなってきたんです。
やっぱりここぞという所にヘンタイを配するとキマるんですよね、以前は読めない仮名は敷居が高い、なんだかいけ好かない、お高くとまりやがって!って思ってたんですがねw
私も立派なヘンタイ紳士に足を踏み入れつつあるのでしょうか。

書のグラフィックな魅力だけではなく、歌そのものも味わい深く面白く、それが絵や書風と響き合うところが、やまと絵&やまと歌が共に在ったという意義なのでしょう。
やまと絵が伝統的に記号的(非写実)なのは、歌や物語との関わりが深かったからではないかと思いました。

歌というのは考えてみると象徴的で記号的な言葉の表現ですからねぇ。
和歌の世界で紅葉といえば竜田川、桜といえば吉野山、山吹といえばぶっきー(フレプリ)ぢゃなかった井手の玉川。
そんな共通認識を利用して、工芸品などの意匠で読み解き遊びを盛り込んだり…源氏物語の表紙の装丁は豪華で美しかったなぁ。

和歌が書かれなかった空白が未完成感のある歌仙図は、珍しい写実的な肖像…と思ったら(伝)円山応挙筆でした。

そういえば、歌仙図といえば讃岐の国の金刀比羅さん、あそこには円山応挙・伊藤若冲もあったなぁとふと思い出した。
香川アートスポット〜金刀比羅宮


【めくるめく絵巻物の世界】

流麗なかな書に静かに興奮しておりましたが、やまと絵もまた素敵でした。定番の源氏物語はいわずもなが。

ずっとみたかった岩佐又兵衛の肉筆画を拝見。保存状態が良いのか、金銀の本来の効果が保たれていてデモーッルト良い!
特に、精密に描かれた武人達の輪郭線が金で輝いてる。やまと絵独特の濃彩色と、金泥の霞の輝きが、本来はキラキラこのように調和しているのかとわかる逸品でした。キラやば〜っ☆

江戸初期の絵師、岩佐又兵衛は人々の喜怒哀楽を描くことで浮世絵の祖とされる(と、へうげもので読んだ)
描いた堀江物語絵巻は武人の仇討ちの物語、侍は元々は貴族に雇われていた私兵で荒事の当事者だったとか、そんな事を思い出させるやや荒ぶる武人像でした。
そんな侍層の中にも黄金の志を抱いた若者がいた、この源頼朝には正しいと信じる夢がある!平家のボスを倒しサムライスターに…略)

浦島物語絵巻、漁師なのにまるで貴族のような生活で描かれているの笑ったw auも驚く荒唐無稽。

池田孤村が描く平安歌人 赤染衛門は美人さんでした。美しい和歌を詠むというだけでときめくという平安貴族の妄想、分かる気がしてきたw
コレクションは中近世のやまと絵が多いそうなのですが、古美術的な価値はともかく、劣化の少ない美しい絵は鑑賞にはよいと思う。

紅葉の小袖がおしゃんてぃーな立ち美人図、「竜田越え」の意が込められているという。
後ほど、伊勢物語の段で詳しい話を知りました。筒井筒で結ばれた夫婦のお話し。

「風吹けばおきつ白波たつた山 夜半にや君がひとりこゆらん」
浮気に出かける旦那の道中を、健気な妻が身を案じて詠んだ歌、そんな物語がこの絵に描かれた女性には含まれていた、奥深いものですねぇ。

伊勢物語のやまと絵、人物はかわいくデフォルメ、でも描写は意外に精密…それって萌絵と同じやん!日本の中世絵画って未熟だから描写が拙いのだと思ってたけど、そうじゃなくあくまでkawaiiのが好きな民族性だったんだねぇw

おっと、有名な絵師の作品もありました。
江戸淋派の祖 酒井抱一の短冊。なんともやわらかくグラフィカルでさすがの優美さでした。
そして葛飾北斎肉筆画帳。まるでグラビア印刷のようなクオリティでほんとに肉筆画なの!?これぞ神業ですねぇ。

感想:葛飾北斎〜富士を超えてatあべのハルカス美術館

IMG_7926.JPG


【中之島香雪美術館】

そんなわけで、有名所も押さえている優品コレクションが、開館記念割引き(ポスカをどこかでゲットした)で800円で楽しめるとかもう十分すぎました。(このジャンルに興味があれば、でしょうけども…)
大阪の新しい美術館、おすすめです。2019年春は鳥獣戯画の特別公開もあるそうですよ(明恵のみた夢の展覧会)

京都博物館で拝見したときの記事
墨絵の金字塔、鳥獣人物戯画を拝見してきました

コレクションにはフーテンの梁さん(梁風子=梁楷)の「布袋図」もあるそうです(東山御物・重文)お土産のパッケージになってたw
感想:国宝展 at 京都国立博物館〜等伯×永徳・牧谿×梁楷 水墨画オールスター祭りだよ!


香雪美術館は、朝日新聞社の創業者、村山龍平(号:香雪)氏が収集された美術品を展示する施設ということで、コレクションはこれらの他に、数寄者らしい刀剣などの武具・茶器・書跡・仏教美術が中心。
朝日新聞って大阪だったんですねぇ。フェスティバルホール、甲子園の全国高校野球、東洋古美術誌「國華」の支援など、様々な文化的後援もされているとか。

館内にはお茶室がまるっと再現、古田織部の茶室「燕庵」の写しだそうです(藪内流燕庵→玄庵→中之島玄庵イマココ)
「燕庵」(えんなん)というと、客人のお供(ご家来衆)の相伴席を設けたという事で、戦国の世で利休居士が主客の立場や身分の差を超えた密接な場として発展させた茶室を、古織殿が新たな江戸の武家社会にあわせて変えたとか師の意志を曲げたとか(と、へうげもので読んだ)いわれてたアレですね。

戦国の世に発達した茶室は、戦の合間にほっと心を和ませる空間として多忙でストレスフルな大名武将達に必要とされたのだろう…と、再現された茶室を眺め思いを馳せつつ、大阪ビジネス街ど真ん中のこの美術館はまさに市中の山居でした。

日本美術の優美な世界に浸ったら、さぁ年末の追い込みにいざゆかん!
(と、いいつつこんな長文書いてしまったオレ乙)

玄庵.JPG
中之島玄庵
追記2019年2月
二回目の「物語とうたにあそぶ」へ。岩佐又兵衛の絵巻や北斎肉筆画帳の別画を拝見。でもそれ以上にかなの達人の優雅な書跡を眺めるのがディ・モールト心地よい!

月与志site
http://tsuyoshi-jp.com

Facebook Artist page「月与志」
http://www.facebook.com/tsuyoshi.art

tumblr
https://tsuyoshi-jp.tumblr.com/
posted by 月与志(tsuyoshi-jp) at 06:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想:古典

2018年05月03日

感想:イケてる水墨画家 池大雅 at京都国立博物館

只今京都国立博物館で開催中の特別展「池大雅」に行ってきました。
綿密に描き込まれていながら、爽やかな風が吹き抜けるような風景を描いた、イケてる水墨画家です。

会場を訪れた国宝少女たちは、丁度いらしていた池大雅先生と記念撮影させて頂きましたが、なんとここで先生が三弦をつま弾いて名物達を讃える詩を披露。イケてるおもてなしに少女たちは大歓喜!

イケてる墨絵師池大雅.jpg

ほんとイケてる池大雅!というのが今回の戯れ絵でございます(´ω`)

国宝擬人化少女→感想:国宝展 at 京都国立博物館〜等伯×永徳・牧谿×梁楷 水墨画オールスター祭りだよ!

さて、池大雅 日本では85年ぶりの回顧展、その感想記事です。
池大雅とはどのような画家だったのでしょうか?
ぶっちゃけ私も、水墨画に関わらなければ知るよしもなかったのですが…。

円山応挙伊藤若冲など、個性派画家がしのぎを削った江戸時代中期の京都画壇。その活況のなかで、与謝蕪村とともに「南画の大成者」と並び称されるのが池大雅(1723〜76)です。その作品は、寡欲で恬淡、きわめて謙虚だったと伝えられる人柄を象徴するかのような、清新で衒いのない明るさに満ちています。
公式サイトより→特別展 池大雅 天衣無縫の旅の画家


今再び注目を集めている円山応挙や伊藤若冲、その同時代に活躍した京都の人気画家だそうです。

当時から有名人だったらしく、展覧会では「京(みやこ)の三畸人(きじん)」の一人と紹介されていましたが…これほめてるの、けなしてるの?(´ω`)
ちなみに三畸人の一人は売茶翁(ばいさおう)でした、ということは…。

伊藤若冲のお話し→Rp:生誕300年記念 伊藤若冲展 at相国寺承天閣美術館

また池大雅は、与謝蕪村とともに、日本の南画文人画)の大成者ということです。

そうそう彼が与謝蕪村とコラボした作品も有名ですね。(むしろこっちを知ってました=川端康成せんせがこれ好き過ぎてはぎゅ〜〜っと財産ぶっこんで!ゲトしたという「十便十宜図」)
※ここから画像はWikimedia CommonsのPublic domainを引用しています

The Chobenzu by Ike Taiga
釣便〜十便図 池大雅
By Ike Taiga(1723 - 1776) 池大雅 (Kawabata Foundation (公益財団法人 川端康成記念会) 記念館) [Public domain], via Wikimedia Commons


しかし待て、与謝蕪村というと俳句の人ぢゃなかった?
改めて調べたら与謝蕪村は「江戸俳諧の巨匠」「俳画の創始者」とありました。

俳画というと、俳句の世界観をさらっと描いた趣のある絵ですかね。
蕪村は俳句を詠み画も描く。池大雅は書も達人で画の名手だったとか。

Ike Lungshan
蘭亭曲水龍山勝会図 池大雅筆
By Ike Taiga (Catalogue) [Public domain or Public domain], via Wikimedia Commons


なんだか両方いろいろできちゃうのは不思議な気がしますが…うーんそもそも芸術事に垣根があるように思うのはなぜなんでしょうね?
文人画の世界では、どうやらそこに隔たりは無いようですよ。

さて真面目にお勉強しているわたしでも未ださっぱり分からない水墨画の世界ですが(´ω`)めちょっく!
普通に暮らしてる、現代っ子はもっと分からないですよねぇ。
キーボードやスマホが主流の今、普段「筆」を使う事が無いし、床の間に掛け軸や華のある生活とか今では少数派のように思いますし。

そういった環境の変化と、中国文化の知識が失われている事が、水墨画が現代と縁遠くなる理由なんでしょうねぇ。
まぁかくいう私の中国のイメージなども、西遊記・三国志・パンダにカンフーにきょんしーですからねぇ(いろいろ間違えてるぞ)

そんな訳で、池大雅の「南画」についても、鑑賞するために少し知識が必要ですね。


■南画(文人画)とは?

江戸時代後期の日本では、上方江戸を中心に豊かな文化が育まれ、絵画も大変盛んになりました。
そんな中、中国絵画の新様式、南宗画(なんしゅうが)に学んだ絵師達が現れ、中国風の山水画を描き「南画」と呼ばれました。
池大雅と与謝蕪村がブレイクさせた「日本南画」は、西洋美術の波が押し寄せる明治初期まで大いに流行したのだそうです。

彼らが学んだ中国の「南宗画」は、「文人」(ぶんじん)という特権階級の知識人が担った絵画=文人画でした。
高い教養と優れた精神が優れた芸術を生む、という考え方、そして詩と書と描かれる画の世界観が調和しているという「詩書画一致」という特長があるそうです。

日本の南画家たちが憧れたのが、どうやらこの「文人」の高潔な世界のようですね。
教養風雅を愛し、権威に抗い、世俗を脱する生き方に憧れ、実践した人々の芸術。
江戸時代に流行した「浮世絵」=「今をエンジョイしようぜまじパリピな世俗肯定」とはまた違った芸術を支持する人々もいたのでしょう。

そうそう、前述の畸人(きじん)=俗塵に染まった世で自由に生きた人の意味でした。褒めてたんだねw

ちなみに、文人画は、非職業として絵を描く事を重んじているようで(プロではない素人の絵描き、ただし教養人に限る)それまでの職業画家を批判する立場をとっていて、巧みに上手く描くことを良しとしないイメージがありますね。
心のままにとらわれることなく、自由に表現するを良しとする価値観は、今もどこかに受け継がれている気がします。

そんな訳で、同じ水墨画でも、室町時代の雪舟パイセンや、安土桃山時代の等伯ニキの水墨画とはまるで違う背景を持っているのですねぇ。

感想:国宝展 at 京都国立博物館〜雪舟にツッコミを入れてみる

池大雅_京都国立博物館.JPG


■池大雅の人となりと生涯

さて、展覧会には池大雅の書画、関連資料や作品など様々、驚くほどありました。
えーと、ぶっちゃけ池大雅の山水画ってどれも同じに見えていたのですが…(´ω`)
よくよく観ると、かなり画風が変化しているというか、むしろ描く度にいろいろ試していたんぢゃないかっていうね…。

幼少より書が達者、神童と呼ばれ、南画の先達に見いだされ、文人画を学ぶ。
妻の玉瀾も画家で、芸術家夫婦らしいほのぼのエピソードも。
京都の現在円山公園辺りに庵を構え、画を描き、詩を詠み、愛妻と音楽を奏でる日々これ好日。

これは現代に例えると、都会の一等地にアトリエを構え、洋風のライフスタイルで暮らす当代一流の文化人、といった感じでしょうか。

そして文人の高雅な生き方に憧れ、中国渡来の画譜(絵の手本)で学び、山水を描くため旅を重ねます。


■旅の画家

今ほど自由に旅する事が困難な時代にも、大雅は日本各地を旅し写生に努めたそうです。
で、その成果ともいう作品が…箕面の滝、清水寺、松島遠景、富士山でさえ…中国風に描かれてて驚きましたww
よっぽど中国の文化に心酔していたんですかねぇ。今の私達の感覚からすると違和感パないですがw

池大雅が中国に渡ったという話は聞かないので、おそらく中国の実景を見る事なく、憧れを膨らませて創作に励んだのではないか、と。
そもそも山水画は、実景を描くのではなく、胸中に描いた世界を描くものだそうで、いわば憧れで描いた妄想世界w

例によってわかりやすく現代に例えてみますと…四畳半アパートで暮らす若者がカップ麺すすりながらシャレオツな洋楽を聴いて、リバプールやアメリカ西海岸はお洒落ピープルで溢れていると妄想するようなものでしょうか。
そして、そっくりそのまんまの音を再現し、英語で歌い、和製なにがしと評判になり、妻は竹内まりやかユーミンか(´ω`)池大雅こそ、元祖渋谷系といえる存在ではないでしょうか(意味不明)


■変化する作風


中華風だった日本の風景画も「日本十二景」ではかーなり和風な味わいになっていたり。
実際に山に登って描いたスケッチや「真景図」は、西洋画の遠近法が取り入れられていたり。
中国様式から徐々に脱して、独自の画風に歩を進めていたことが、順に追って観ていて分かりました。

指頭画という、指に墨を付けて描くパフォーマンス的な画法にもチャレンジしていたり。
京で当時一世を風靡していたであろう「琳派」に倣った作品があったり。
かなり色々試行錯誤していたんだなぁと。

作風が開花するのは40歳代以降。
筆の勢いに任せない、墨点の積み重ね、まるで織物のような地道な描き込み。
それでいてクドくならない、どこかヌケ感がある墨と白のバランス感覚。
そう、画面に爽やかな風が吹き抜け、暖かさにつつまれるようなイケてる水墨画なのです。Yes! Ike-Taiga Yes!

蘭亭曲水図屏風. 秋社図屏風-Orchid Pavilion Gathering; Autumn Landscape MET DP362635
蘭亭曲水図屏風 池大雅筆
Metropolitan Museum of Art [CC0], via Wikimedia Commons


墨絵なのに色を感じる点描すご…って、ホントに色ぬってるやんかーいw
まるで印象派のそれな…そう、19世紀末の印象派は、色の混色をしない点描でにごりのない清らかな画面を手にれたということですが…それに通じるものがやはりありますね。

IIke Taiga Bankett am Lunshan
蘭亭曲水龍山勝会図 池大雅筆
By Ike no Taiga (Cataqlogue) [Public domain], via Wikimedia Commons


ところで、池大雅の生涯を知ると、文人のイメージと違い、恵まれたエリート育ちだったわけではないようで。
幼少の頃に父を亡くし、若くして扇を描いて生計を立てたり、後に名声を得ても清貧な生活をしていたような様子でした。理想の「文人」に憧れ、そうありたいと願っても、実際は絵を売る職業画家だったり…。

どうやら池大雅せんせは、生まれながらのイケてる男ではなく、努力して真のイケてる画家になったに違いありません。私も彼を見習って、超イケてる墨絵師をめざして、がんばるぞいp(´Д`*)q☆

そして今回もまたニコニコ生放送で京都国立博物館より生放送があるそうで、楽しみです。
京都国立博物館 「池大雅 天衣無縫の旅の画家」展を巡ろう


月与志site
http://tsuyoshi-jp.com

Facebook Artist page「月与志」
http://www.facebook.com/tsuyoshi.art

tumblr
https://tsuyoshi-jp.tumblr.com/
posted by 月与志(tsuyoshi-jp) at 10:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想:古典