2019年12月03日

感想:流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美 at京都国立博物館

憧れの「王朝美」の世界を堪能しました。
会期は終了しましたが、恒例の感想blogをお届けいたします。

公式特設site→流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美 at京都国立博物館

感想を一言で申しますと「これが雅~MIYABIということか☆」
王朝美の手本として、古の神絵師の御技を学んで参りました。

数ある和の美の系譜の中で、本命本流と私が思う王朝の美(個人的な好みはあるでしょーが)
機会を見つけて学んでいるのですが、絵描きだからといって単に手を動かすだけではだめで。
文化」を知るには博物館に通って本物を見たりと、時間をかけてこつこつ学ばなければ知り得る世界ではないと思っています。

例えば、王朝美ルネサンスの淋派が、江戸期に新たな「歌仙絵」オマージュ作品を創出しているのを拝見、その感性や手法に様々なヒントを頂きました。
展覧会に足を運んだかいがあったというものです。


月夜三人娘_三十六歌仙絵.jpg

さて、今回のイラストも「月夜三姉妹」が登場。
雪美、月美、花美の雪月花三姉妹が、平安時代の女流歌人に扮し、仮名を披露、サインまでつけております。
向かって右より

三十六歌仙絵_雪美.jpg

三輪の山 いかにまち見む 年ふとも たづぬる人も あらじとおもへば 〜伊勢(いせ)by雪美


三十六歌仙絵_花美.jpg

岩橋の 夜の契りも たえぬべし 明くるわびしき 葛城 ( かづらき ) の神 〜小大君(こおおきみ)by花美


三十六歌仙絵_月美.jpg

うぐひすの こゑなかりせば ゆききえぬ 山ざといかで はるをしらまし 〜中務(なかつかさ)by月美


和歌でおなじみ、仮名(かな)は「女手(おんなで)」ともいいまして、万葉仮名を、平安貴族の姫女子たちが洗練させて誕生したといいます。
文化の担い手に女性の感性が加わったこの時代を、とおっってもっきらやばっ☆に描いてみました。

展示にあった後鳥羽院三十六歌仙絵も、佐竹本と比べれば素朴ながら、非常に構成的で面白かったのでこちらも参考に。
※ちなみに佐竹本 伊勢、中務、は今回出展ではありませんでした。

これを描いていたため、記事の更新が遅くなりました。
細かい描写を手間ひまかけて仕上げて行く…これが文字通り「尊い」のだなぁ、と理解したw



■佐竹本三十六歌仙絵

中世に数多く描かれた三十六歌仙絵の中でも、草分け的存在にして最高傑作と名高い「佐竹本三十六歌仙絵
もし切断されていなければ間違いなく国宝級、ということです。

佐竹氏というと、伊達政宗のライバルだった戦国大名が思い浮かびましたが、平安時代から明治まで続く名門だそうで。
その佐竹侯爵家に伝来した「佐竹本」が、ちょうど百年前に売りに出されるも、破格の値段故に買い手がつかず、絵巻は一歌仙ずつに分割され、別々の所有者のもとに秘蔵。
それが100年を迎えるメモリアルイヤーにほぼ全員が一堂に会す、という素敵な展覧会でした。

今から百年前の1919年といいますと…第一次世界大戦が終わり、ドイツでワイマール憲法が制定されバウハウスが設立、ミュシャがスラブ叙事詩の最初のお披露目をし、日本ではカルピスが発売された年(大正8年)、絵巻分断と流転の物語は色々な逸話がありました。

絵を手に入れたのは、鈍翁~DON-OHこと益田孝氏と当時一流の実業家たち。
私がかろうじて知っていたのは逸翁~ITSU-OHこと宝塚の小林一三氏。

持ち主はいずれも数寄者、歌仙たちは新たに表装され、茶会で披露されることで、新しい価値をもって蘇ったという…国宝にはなれなかったけど。
名のある持ち主が所有していた、という来歴が「名物」となる、日本美術の価値感ですね。

※興味があればNHKさんの番組などご覧下さい。ちなみに切ったのではなく絵巻としてもともと繋いであるものを剥がしたのだそうです。


IMG_2148.JPG

さて、展覧会は、本物の歌仙絵を生で拝見出来る又とない機会でした。
会場では流麗に描かれた古筆の魅力に心かきむしられるぐらいでしたが、絵の方は…。
私の見る目はまだまだ「見功者(みごうしゃ)」にほど遠いのでしょう、ぶっちゃけ色あせ古ぼけた絵にしかみられず、我ながら残念至極。
後にNHKの番組「日美」や「歴ヒス」の解説で、佐竹本三十六歌仙絵師の神業、その真の価値を知ることになるのでした。

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■繊細すぎる描写
日曜美術館」の解説で理解しました、まるで歌が聞こえてくるかのように…和歌の心情を巧みに描いた肖像の凄さを。

風が吹いたような、衣服や髪の動き、構成の美しさ…まるでシャッターを切ったかのような、瞬間を切り取る止め絵(平安時代にカメラあった説どうっすかね?)
歌に詠まれた風情を、直接描かず(背景は完全な空白)、描かれた歌人の動き、視線、表情で間接的に表している…という絵の魅力。

描かれたのは洗練された理想の歌仙の肖像、人物の描き分け、個性の表出、心情まで。一人一人違う。
金泥、銀泥、雅な文様の緻密な描写。お顔の繊細すぎる描写、ごく僅かな色彩の表現(白い肌のナチュラルメイクっぷりよ)

今のイラストレーションで完成されている様々な絵師の技が、800年前の鎌倉時代に既に描かれていることに驚きを禁じ得ません。


■古筆の魅力

雅な大和絵は、表現豊かな和様書と共にあってこそ。
会場ではとにかく、白と黒のコントラストが織りなす「和様書」が心地よくてたまりませんでした。

雲母刷りの唐紙の竹桃文様に乗せて、奏でるように走らせた書。
まるで楽器の掛け合いのようなハーモニーです。

平安〜鎌倉初期の古筆は特に、柔らかく優雅で、唐直輸入の奈良時代とも、鎌倉以降の武家文化のそれとも違う。
国風文化が花開いた時代に生まれた、日本独自の美意識の最も濃い所、というか原典がここに。

しかし…変体がなはまだ読めない…読めてもそこからさらに書き手の癖があったり…。
因みに選ばれている和歌はあまり聞いた事ないものばかり。百人一首とは違うんだね…。

古典作品は圧倒的に「書」がかっこいいと思う。
鮮やかで雅な画と、モノクロームの筆跡の組み合わせに心わしずかみにされます。

明治時代に世界標準のアートのフォーマットに仕立て上げられた今の日本画には無い魅力。
中国由来の東洋文化を基盤に、書と画が分け隔て無くあった「大和絵」が好きだ。
だから私はそれを目指そうと思う。


■王朝美ルネッサンス〜淋派

展示の最後で拝見した、鈴木其一の三十六歌仙絵が眼福でした。
歌仙たち三十六人が(会場で数えた)一枚絵にわんさか収まって、雅というよりなんだか愉快。
中国の仙人絵のような…酔ってこそいないが、和気あいあいで楽しそう。
倣:緒方光淋…とあったから淋派の画題なのかしらん。

目を引いたのが、歌仙の黒い衣装をたらしこみで再現している所。
古い大和絵の色の劣化が、場合によれば味わい深い美の要素として感じられる…そういった事なんでしょうね。憎い演出です。

古美術好きなら「わかる」淋派ってマニア度高すぎぢゃんね(マーちゃん風に)と思ってたら、その上を行く、後世に作られた佐竹本三十六歌仙絵模本は、紙面のシミまで忠実に再現、ここまでやる古美術マニア最強すぎでしょ。

私もまだまだ見識も感性も足りませんが、こつこつ描いていきますよ。

青竜_02.JPG

月与志墨絵

水墨白虎_02.jpg

墨絵アートてぬぐい〜四神/青龍・白虎・朱雀・玄武


■海外流出する美術

佐竹本三十六歌仙絵が分割された理由に、当時、古美術海外流出が盛んだった事があるようです。
最近でもよく「里帰り」している水墨画の名品や浮世絵など、この時期に海を渡ったものが多いとか。

現在の日本文化の最先鋒のひとつ、漫画・アニメが同じ道を辿りつつあるような話を聞きます。

国の文化美術が流出する、というとまずい事のように思いますが、必ずしもそうではなく、時流の変化で日本で無価値とされたものでも、海外の理解あるコレクターがそれを保護して後世に伝えてくれる事もあるのです。
例えば中国で失われた文化美術が、台湾や日本に伝わって残っていたり。その逆もあるのでしょうね。

このお話、詳しくは、次の記事で。


あいかわらずとりとめのない雑感で申し訳ありません。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。

この次は、久々のサブカルチャー記事の予定、「富野由悠季の世界」展に行ってきました。
ご期待ください。スペース・ラナウェイ!


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2019年10月21日

感想:クリムト展〜ウィーンと日本1900 at豊田市美術館/美しい黄金体験〜名古屋城

クリムト絵画の本物をこの目で観られる機会ということで、名古屋は豊田市美術館へ足を運びました。
※美しい黄金体験〜名古屋城本丸御殿障壁画は記事の最後です。

グスタフ・クリムトとは、世紀末ウィーンを代表する帝政オーストリアの画家。
最も有名な代表作「接吻」はオーストリアの国宝級の存在。ウィーンの宮殿にある美術館に、この一枚の絵を目的に世界中から人が訪れるといいます。
日本でも人気が高く、特に絵やイラストに関心の在る若い世代なら一度は通るミュシャとクリムト、ではないかと。

クリムト…アルフォンス・ミュシャと並んで不動のツートップ、そこにビアズリーギュスターヴ・モローを加えて世紀末御三家(表現が古っ)と呼びたいw
以上あくまで個人的な見解です。(絵画史の重要性は無視したあくまで人気準拠)


クリムト_月夜三姉妹.jpg

今回のイラストは「ベートーヴェンフリーズ」より

ベートーヴェンが変身した正義の味方〜空に輝くぅきらきら旋律「黄金の戦士」その行く手を阻む敵対勢力「怪物テュフォンとゴルゴン三人姉妹」
悪、不貞、淫欲などの象徴として登場する三姉妹…を、おひさしぶり月夜三姉妹にかわいく演じてもらいました。※ひょっとしたらゴルゴンの娘達ぢゃなくって蛇娘だったかも

クリムト…正直なところ、私の敬愛するアルフォンス・ミュシャほど思い入れはないのですが、同時代の人気画家の作品を見て知っておきたいと思いました。


ミュシャ後L.jpg

こちらはミュシャ晩年の代表作「スラヴ叙事詩」来日で大変話題になった2017年国立新美術館「ミュシャ展」の感想レポートです。
感想:ミュシャ展 at国立新美術館



さて、初めて訪れる豊田市美術館
日本最大規模のクリムト展といえど、見られる作品点数は少なめなので、きっと様々な補足展示で話が膨らませてあるのでしょうと期待。
まずは修業時代の古典的で神業的な油絵、これ学生さんの作品ですか??そして家族の紹介。弟と親友と共に歩んだ青春時代。妹達の存在も重要だったようです。


■ジャポニスムの影響
次に、当時ヨーロッパでブームだったという日本美術の影響を紹介する展示。
フェノロサの東洋美術史の図録には琳派も掲載されていたし、浮世絵なども。こういうもので学んでいたのかなと。
「日本の春画三十六撰 菱川師宣、鈴木春信、喜多川歌麿」モノクロ画なのに、着物の柔らかさや派手な意匠を繊細なタッチで表現している神業レベルの美しさでした(悪いけど今回の展示で一番感動したわ)
欧州では有名な知られざる日本人画家、小原古邨の版画もありました。

とはいえクリムトのコレクションは、東洋美術全般なので、中国・朝鮮の美術工芸品なども含まれます。
浮世絵や着物など、この時代の画家達に大きな影響を与えたジャポニスム偉大なり!となんでも日本の影響と考えて悦に入るのはいかがなものかと思うのですが、
しかし実際、縦長の判型、簡略化、余白の研究、絵画中に文字を取り込む、といったクリムトや同時代の作品群を見ていると、浮世絵の構図を学習した跡が伺えます。

Klimt - Friends I (Sisters), 1907
Gustav Klimt [Public domain]
以下、Wikimedia Commonsより画像を引用

ジャポニスムなど東洋美術を吸収しつつ、ヨーロッパに無かった独自の新しい様式を確立した、というのが大事な所なのでしょう。

しかしながら、クリムトの柔らかく華美な装飾的衣装と、エロチックな画題は、前述の春画からの影響なのでは…と想像すると楽しくなる、そんな展示構成でした。

ジャポニスムについて、こちらの記事はご参考まで。
感想:葛飾北斎〜富士を超えてatあべのハルカス美術館


■クリムトの作品
さて、待望のクリムトの有名な作品を鑑賞しました。

IMG_1766.JPG


ユディトI
この一枚に様々なタッチや要素が共存している、描画の多彩さ巧みさに目が行きました。
伝統の写実的表現の人物と印象派風のぼやけたタッチ、装飾的に施された金も、背景とやわらかな衣服で異なる印象。
弟が制作したという金彫の額もイメージを増長する要素です。
しかし最後はやはりこの女性の恍惚の表情が強く印象に残ります。
「ファム・ファタル」(宿命の女〜男を破滅させる魔性の女)の代表的一枚。
私の周りでは、沢田研二顔…ということになってますが(´ω`)

Judith 1 (cropped)
Gustav Klimt [Public domain]

ベートーヴェンフリーズ
これを見に私は名古屋に行きました。1902年の第14回分離派(通称ベートーヴェン展)の会場の壁面を飾った大作の再現。

Beethovenfries.jpg
By グスタフ・クリムト - First uploaded to de.wikipedia by de:Benutzer:Hans Bug., パブリック・ドメイン, Link


現物は壁の漆喰と金のマチエールが印象的。クリムト独特の女性描写(今風にキャラデザと呼んでいいかも)が洗練された作品をじっくり見る事ができました。

物議を醸したウィーン大学大講堂の天井画(「哲学」「医学」「法学」)は現存しないため写真のみでしたが、ここから年月を経てクリムトキャラは完成をみたのだな、と。
おそらく後世へ与えた影響は大きいだろうね、ミュシャと同じくSFイラストの祖とでもいうような…人気があるわけだ。

その当たりの考察は、まもなく京都にも巡ってくる「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術」で期待。 

後世の評価はともかく、当時は「総合芸術」を目指した時代。
絵画と、建築、工芸、さらに音楽や舞台芸術など、異分野を統合し未来の芸術を目指した「モダニズム」前夜。
そして、音楽の革命家ベートーヴェンを讃えるというテーマが、音楽の都として誇りを持つウィーンらしい。

ところでこの「ベートーヴェンフリーズ」を明るい照明下でじっくり細かい所まで鑑賞できたのはありがたい事だったのですが…正直、この作品から劇的感動はあまり感じなかった。
これは照明の問題のような気がします。
1902年のベートーヴェン展ではどのような照明で見せられていたのか…会場の雰囲気はどうだったのか、気になります。

後述しますが、美しい壁画の見せ方、金の魅せ方に関して、帰りに立ち寄った名古屋城の障壁画がとても素晴らしかったのですよ。


肖像画と風景画
クリムトの有名な「黄金の時代」以外の作品もいくつか在りました。

女性を魅力的に描く技量はピカイチだったため、ウィーン社交界で有力者の妻や娘の肖像画の依頼を沢山請け負っていたといいます。
ご依頼の肖像画作品は、流行の画風で美しく無難に描いているものと、クリムトの個性を発揮した「美しいお顔以外は容赦なくアバンギャルド」なものがあって、作品によっては本人がお気に召さず物置き行きになったものもあったらしい。ご依頼仕事って難しい。

このクリムト絶頂期は「ベートーヴェンフリーズ」の失敗から訪れたというのも皮肉なお話し。
卑猥!醜悪!退廃的!と世間的に非難ゴーゴーで、国から仕事の依頼は絶え、「分離派」からも批判の声が上がり脱退の遠因にもなった一方で、肖像画制作と個人的作品世界の追求がなされる契機にもなり、文字通りの黄金期を迎えるのだそうです。
ちなみに、クリムトのパトロンは、有名な哲学者を生んだヴィトゲンシュタイン家などの東欧系ユダヤ人富豪。
ウィーンの新しい芸術を支えたのは彼らだが、隣国ドイツでは反ユダヤ主義が広がっていた、という時代。

一方、都会を離れて休暇を過ごしていた湖畔で、クリムトは多数の風景画を描いていました。
世に知られた個性的な画風とまるで違う、素直な風景画(といいつつ抽象化などの試みはみうけられる)に、都会の絵画はあくまでお仕事モード、こちらがプライベートな心の絵画なのかな、と思ったのですが。
永遠の恋人エミーリエと過ごした湖畔ですからね。

女性好き・反道徳的な行いやライフスタイルも話題となるクリムトですが、その奔放な姿が後世の「芸術家のイメージ」をつくったのかもしれませんが、あんまりその辺興味ないっす。
あえて言うと、ミュシャとの大きな違いはそこかな、と。
ミュシャとクリムトは、ほぼ同年代で画家の王ハンス・マカルトの影響を受け、同じ時代を駆け抜けた作家。そういう意味での興味です(熱いミュシャ推し!)

因みにクリムトの元カノで作曲家グスタフ・マーラーの妻になったアルマという女性が、とんでもなく「ミューズにしてファム・ファタル」なのだそうですよ、どうでもいいですが。


女の三世代
代表作のひとつ「女の三世代」は傑作でした。黄金の画風も洗練を極めてもうただ眼福。
身近に起きた不幸から現れた「生と死」というテーマの重さを含みつつ、絵画の印象として華麗なところがクリムトらしいなと。

The Three Ages of Woman.jpg
By Gustav Klimt - https://www.flickr.com/photos/griffinlb/3360468120, Public Domain, Link



「女の三世代」で展示は終了。「接吻」はきっとウィーンが離さないのでしょう。


史上まれにみる文化の爛熟を示したという世紀末ウィーン、時代の転換期、保守的な社会に戦いを挑んだというクリムトの芸術。
技法や表現は革新的だけど、描かれたテーマはむしろ古典的な印象です。

芸術はその後、モダニストとイズムの作家達がより過激な戦いを繰り広げて、世紀末は早々に時代の彼方へ追いやられてしまう。
ある意味、ポストならぬ、アーリーモダンな作家たち。
その中で飛び抜けて人気なのは、やはりクリムトの「作家性」。描いた絵そのものの魅力なのでしょうね。

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以上「クリムト展〜ウィーンと日本1900」の感想でした。


■美しい黄金体験〜名古屋城本丸御殿障壁画

尾張名古屋は城で保つ〜意味は良く分かりませんがwせっかく名古屋まで来たからにはお城へGO。
名古屋城にはとっても美しい障壁画空間を体験することができます。
狩野探幽狩野派絵師による障壁画と天井画が現代の画工の手で完璧に再現され、ピカピカに光ってます。

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名古屋城と本丸御殿は太平洋戦争末期1945年の空襲で焼失したといいます。当時の記録写真など見ましたが、町のシンボル、貴重な文化財が焼かれたとは…どれだけの衝撃だった事でしょう。
本丸御殿は平成になって復元工事が始まり、平成30年に完成公開されました。私も二度目の訪問です。

何が素晴らしいかと言うと、築城当時のままの美が忠実に再現されていることです。
劣化しやすい金箔や緑青が美しく本来の姿で見る事ができる。狩野派の絵師がどのような美意識で色を使っていたのかは、ここから学ばなければいけません。

教科書などで学ぶ中世の古典美術はたいてい劣化した当時の美を留めない姿です。
社寺仏閣は古さにこそ味わいがある…古都に住むものとしてそれはよーく分かっています。
文化財は古ければ古いほど価値がある、江戸期より室町以前が断然価値が高い、正倉院展が開催される奈良県民はよく理解していますとも。

しかし、絵師としての価値観は、また別よね、という話です。

名古屋城の本丸御殿障壁画は、絵というより空間そのもので、江戸時代に完成された武家の建築と装飾の「美的空間」が理解できる、いわばテーマパーク。(名古屋城さんすいません)
この空間体験を得て、はじめて狩野派の障壁画の魅了が腑に落ちるのではないでしょうか。
図書館の図録より、美術館より、本物の体験が名古屋城にあり!(よいしょー)

なにより印象的なのが、金が醸し出す柔らかい美しさです。部屋を照らす灯火(もちろん代用ライト)の反射が作りだしているのだと思うのですが、これが劇的な効果を空間に与え、幽玄な雰囲気を演出しているのだと分かりました。嗚呼、陰影礼賛ニッポン。

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そこで偶然ながらもクリムト展と繋がりました。前述した「ベートーヴェンフリーズ」の物足りなさは、そういうことだと。クリムトは黄金の効果で光の扱いにどこまで意識的だったのだろう?
クリムトが東洋を旅したという話は聞きませんし、ジャポニスムに沸く当時のウイーンやパリでどこまで日本的な美に触れられたか定かではありませんが、もし、クリムトやミュシャ、世紀末の画家達が、このような本物の障壁画を目の当たりにできたなら…と想像力を豊に夢想するのも面白いですね。

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と、いうわけで、名古屋ゴールドエクスペリエンス(黄金体験)なアート旅でした。無駄ァ足にならなくてよかったよかった。
作品に金色を使い過ぎるのは下手なやり方と避けていたのですが…よい見本を目で感じてきたことですし、
墨絵アートてぬぐいも、きらきら輝くキラヤバなシリーズやってみようかな。

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墨絵アートてぬぐい〜恋ひ恋ひて☆赤染め

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2019年09月25日

感想:「天上の虹」にみる持統天皇誕生の物語 at万葉文化館/初秋の花々

久しぶりの展覧会感想です。

少しずつお勉強中の万葉集と古代の歴史を学ぼうと行ってきました。
里中満智子先生の漫画「天上の虹」の複製原稿の展示が中心なのですが、その作品の背景や時代考証について専門的な説明がつくという文化館らしい展示で、古代にうとい私のような初心者には入りやすいありがたい企画でした。万葉集のお話もたっぷり。

マンガで語る古代大和U 里中満智子『 天上の虹』にみる持統天皇誕生の物語
万葉文化館
※会期終了しています


漫画で古代史というと…石ノ森章太郎先生の「日本の歴史」に描かれた持統天皇が、やり手だけどちょっと恐ろしい女性に描かれていたのですが、こちらの鸕野讃良皇女うののさららのひめみこ/後の持統天皇)は見た目に麗しく可愛い女性像なので、解釈によってずいぶん違うんだなぁという初見の印象だったのですが、読み進めて行くと、やっぱりやり手で強い意志を持った女性像でした。
その時代に生きた歴史上の人物に命を吹き込んだ濃厚なドラマに引き込まれます。

今までは事実を客観的に述べた一般的な歴史を読んでいたので、壬申の乱前後のドロドロとした政争はなんとも恐ろしく正直だめだったのですが、人々の生きた情が通う物語で読むとまるで印象が変わりました。それが一番よかったです。

作者曰く、公式の事実はゆがめない「解釈」がドラマになる。
古代の事は不明な事が多く、それをどのような根拠で解釈し想像力で補ったか、という話は興味深かった(殯宮の描写とか)
『天上の虹』は研究を重ねながら完結まで数十年かかったという作品。一度じっくり読んでみたいなぁ。
個人的には…高市皇子(たけちのみこ)が超イケテる王子さまで安心したw

まだまだ力量不足ですが、私もいつか古代の都人を主題に描いてみたいな、と思います。

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こちらは明日香村にある、天武・持統天皇陵。万葉文化館からも近い。

【文化服装学院×奈良ファッションショー2019「WA」】
今年の夏も恒例の文化服装学院×奈良ファッションショーを拝見。
こつこつイラストに描いております。

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こちらは奈良キッズコレクション。

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【初秋の花々】
残暑が終わったばかりですが、秋の花々はもう咲き始めていますね。
公園のダリアもすくすくと育っておりました。

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こちらは庭にお迎えした花々。秋の七草のひとつ、藤袴。そして紫式部(コムラサキ)いずれも日本に昔から自生している花。

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希少な藤袴…昔は河原等に多く咲いていたのだけれど今は激減している花だとか。
春日大社の「萬葉植物園」で求めました。販売用の植物をお求めなら無料で入場できるそうですよ。珍しい花々がみつかります。


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