
【をんな鼠小僧〜こいつぁ春から縁起がいいわぇ】
令和貳年 子年の描き初めです。
ゆったりにじむ墨線をお楽しみください。
2019年の亥があんまりな出来だったので…今年は方向転換しました(´ω`)
猪八戒に引き続き、鼠の擬人化キャラでございます。
→墨絵de亥年〜猪と猪八戒と水仙
時代劇などでおなじみの「鼠小僧」
弱きを助け強きを挫く義賊のイメージですが。
調べてみますと、モデルとなった鼠小僧次郎吉は江戸時代に実在したそうで、大名武家屋敷を荒らした窃盗犯。
義賊伝承はあったものの、実際は賭博で身を持ち崩した盗人ではないかということです。
一方「金に困った貧しい者に、汚職大名や悪徳商家から盗んだ金銭を分け与えた」という伝説から、庶民のヒーローとして語り継がれ、ほどなく歌舞伎にも登場。
石川五右衛門や白波五人男もそうですが、盗人悪党でも、その強い存在感で人気者になるのも昔からある事なのですね。
罪人の市中引き回しは当時一種の見世物だった…有名人の鼠小僧を一目見ようと野次馬が大挙して押し寄せた、とありました。死刑制度廃止が時流の現代からするとなんとも野蛮な気がするのですが、人の成す事は今昔あまり変わらないのかも。
明治以降は時代小説、時代劇、映画で、鼠小僧次郎吉は人気の題材となったようです。
そして昭和のTVドラマでは「女ねずみ」が登場。
見た事はないのですが、不二子ちゃんみたいな感じ?
今回は、萌カワねずみに、ねこ耳岡っ引で、新しい令和の鼠小僧のイメージを描く心意気だったのですが、そこはかとなく漂う昭和感はご愛嬌(´ω`)
因に…書き添えた「こいつぁ春から縁起がいいわぇ」はよく聞く決まり文句。
粋な言い回しのおめでたい言葉とおもいきや…盗人がぬれ手に粟で大金せしめたって喜ぶ歌舞伎の台詞でした。
というわけで、新年早々ろくでもない絵を描いてしまいましたとさw
描き初めでは、余興という事で、こういうのも書いております。

【生死去来 棚頭傀儡 一線断時 落々磊磊】
映画「イノセンス」(2004年/押井 守監督)でとても印象的だった箴言、
生死の去来するは 棚頭の傀儡たり 一線断ゆる時 落落磊磊
(せいしのきょらいするは ほうとうのかいらいたり いっせんたゆるとき らくらくらいらい)
これは生死に輪廻する人間の有様をたとへなり。棚の上の作り物の傀儡、いろいろに見ゆれども真には動くものにあらず。操りたる糸のわざなり。この糸切れん時は落ち崩れなんとの心なり。〜花鏡
出典は世阿弥の能楽論「花鏡」で、原本は月菴宗光という室町時代の僧の偈文だそうです。
【書の歴史】
昨年は書の歴史を学びましたが、これまた深くて濃い世界です。
日本の古典絵に、なにげなく添えられている書がとても味わい深くて好きなので、今回の墨絵にも書き添えているのですが。
いわゆる「和様書」にも時代により様々なモードがあるのです。
平安時代に一世風靡した王朝風仮名(いわゆる古筆)ばかりが和様書ではなかった。
完成された「上代様」そこから派生した「定家様」、天皇家の書「宸翰様」
室町期には水墨画と共に入ってきた禅僧の「墨跡」。
室町・安土桃山は、武家、文化人、僧、町人の自由な書が発展。
江戸期の公用書体は、青蓮院から受け継がれた「御家流」。
さらに時代の節目で中国書のモード(古代の唐様、江戸の漢学の書、明治以降の六朝風など)が流行したり。
日本の「書」のルーツは弘法大師空海だそうですが、その源流は中国の書聖「王羲之」楷・草・行書の成立に関わった巨星です。
あの「令和」の典拠になったという万葉集 梅花の宴のモトネタとされる「蘭亭序」は王羲之の代表作だとか。
→墨絵アートてぬぐい〜令和をお迎えする・梅桃桜
中国の書は、和様書とはやはり違うのだけれど、石碑拓本など眼で追うだけでもなんだか魅力的。
書にドハマりする人物が歴史上後をたたないのがなんとなく分かる気がする…危ないあぶないw
個人的に今は、楷書が成立する前の、隷書の面影を残したちょっといびつな書がツボです。
そんな気分で書き初めしましたが、これまた目出たさ雅さとはほど遠い内容w
では、最後にちょっとはおめでたそうな一枚を。
こちらは令和の始めの最後の作品。
店頭を飾っております。
こちらで今年の幸せゲットしてくださいませ。
私は今年も地道に描いていきたいと思います。
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