2018年11月28日

感想:藤田嗣治展 at京都国立近代美術館〜乳白色の夢・戦争・祈り

京都国立近代美術館で只今開催中の「没後50年 藤田嗣治展」に行って参りました。
今回は早速blog記事としてアップいたします。

フジタ2.jpg

没後50年 藤田嗣治展 | 京都国立近代美術館

厚塗り西洋絵画に興味はなかったのだけれど、レオナール藤田に関しては、NHK日曜美術館で見た晩年の宗教絵画がとても美しかったのと、公開された晩年の録音テープを聞いたらなんだかおもろいおっさん感が気に入って、回顧展に足を運んでみました。

たまたま生誕祭のイベント日で、いつも静まりかえっている京都近代美術館が賑やかで、丸めがね(自前)で記念撮影&ポスカげっと。

ふじたコス.jpg

藤田嗣治というと、パリで成功したけど日本では評価されない不遇な画家という事と、日本の戦争画の代表作として挙げられる一枚を描いた人としても知っていた。
しかし乳白色のパリジェンヌと砕玉する軍人たちはあまりにかけ離れていて、結びつく事は今日まで無かったのだけれど、没後五十年の回顧展で彼の人生を一望することで、実に数奇な運命を辿った一人の画家を知る事となりました。
ぶっちゃけ絵よりもフジタ自身が面白かったです(´ω`)


若い頃の出世作「乳白色の裸婦」は確かに独特で美しかった。
面相筆を使って墨で輪郭線を描く(東洋画の特長)と聞いていたのでこれは墨絵だとこじつけようと思っていたら、黒の背景マチエールといい、塗り残して肌の白さを浮き立たせる手法はまさに墨絵(もっとも地肌は紙の白ではなく藤田秘伝レシピによる下地)だけど、描画そのものは親友モディリアーニやエコール・ド・パリの画家たちが描くモチーフと同様で、これはこれで「和魂洋才」だなと(横山大観のそれとはまた違う)それにしても女性ヌードが伝統的な主題とはおフランスってエッチスケッチワンタッチなお国ですなぁ(´ω`)
※そういえば乳白色の光彩に既視感あったのは、フジタリスペクト宇野亜喜良先生ですな

フジタはパリでオリエンタル感を売りにしつつ本当にガチで大成功してたみたいです。
で、ここまでだったら、ああこの時代の流行りの絵を描いたヲサレ絵描きさんで終わっていたのだけれど、ここから急転直下、パリを脱して南米に渡り旅する画家になったり日本に戻って地方を巡ったりで画風もモチーフも激変したのは驚いた。

フジタのとても面白い所は沢山の自画像を描いていて、その時々の自分を演出する事に長けている事。
パリ時代、おかっぱ丸めがねピアスで筆硯を持って猫と暮らす自画像は東洋からきたお調子者(FouFou)のイメージ戦略に満ちていたし、後に帰国して描いたというアトリエでの自画像では、日本調の物に囲まれべらんめぇな江戸っ子に様変わりしていてさすがに草生えるwww これはコスプレ自撮リストですわ。
晩年は自作のラジオドラマ風の遺言テープも作ってたしフジタって現代人に通じるメンタル持ってたんじゃないかな、と思った次第。

そんな彼がおかっぱを丸刈りにして(イメチェンするところがらしいよね)描いた作戦記録画
戦争画の代表作みたいなイメージがある「アッツ島砕玉」は、それまでのフジタの作品のどれとも違う独特のエグイ感じ。
ドラクロワなどの西洋の「戦争画」を研究した成果らしく本人も特別な思いを述べているとか(こんな才能の使い方ってどうよ?)
藤田家は陸軍関係者の多い家柄(父は最高位の軍医)だったそうで、ここで認められることはフジタにとって大きいことだったのでは、と想像しました。
戦後、戦争協力者と批判され追われるように日本を去ったのは知っていたのだけれど、渡米した4年後にニューヨークで個展を開いていたのは流石に衝撃の事実でした…。

その後フランスに帰化し洗礼を受けレオナールフジタと改名(レオナルドダビンチにあやかった命名とか)新しい時代のパリを描く事を試みたという後半生の作品は成熟した凄みがあり、特に自らの信仰を描いたという最晩年の宗教画は心惹かれるものがありました。
フランドル派やもっと古いフレスコ画など西洋の伝統絵画をよく学んでいたそうで、その上に彼独特の画風もちゃんと入っていて、こりゃすごい、と。
本格的な宗教画の他に、ややメルヘンチックな子どもモチーフの小品も沢山描かれていて、これがまた可愛くおしゃれすぐる!

エコール・ド・パリ時代のフジタの作品は流行に乗った最先端の絵画、軽快でキャッチー、悪く言えば軽薄だけど、後半生は重くてシリアス、時々面白いw、最晩年は純粋な信仰心と無邪気な子どもに帰ったような作品世界。
生涯を通して見る回顧展ならではの見応えでございました。


フジタ1.JPG


古美術好きなので例年は京都博物館に通う事が多いのですが、今年は京都国立近代美術館に足を運ぶ事が多かったなぁ。
生誕150年〜横山大観展、生誕110年〜東山魁夷展、没後50年〜藤田嗣治展と、日本画ビッグタイトルが続きました。

感想:東山魁夷展 at京都近代美術館〜美しすぎる障壁画の世界

横山大観展は感想記事をまだ書いておりません。生々流転とかぜひ語りたいのだけれど、そろそろ落ち着くかと思うのでいましばらくお待ちください。
2019年は京都市美術館の再開に期待ですかね。


以前番組で、戦争と芸術について特集した事がありました。
終戦の日に考える。絵画・文学・音楽・映画など芸術が戦争にどのように協力したか?
従軍画家藤田嗣治氏と、戦後GHQに没収され日本に返還された戦争記録画から会田誠「戦争画 RETURNS」のお話とか。


月与志のカルチャー夜話 第百十八夜 〜戦争に協力した芸術


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posted by 月与志(tsuyoshi-jp) at 22:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想:近現代
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