2017年11月10日

感想:国宝展 at 京都国立博物館〜等伯×永徳・牧谿×梁楷 水墨画オールスター祭りだよ!

ただいま話題の国宝展!ひきつづき第三期に行って参りました。
中世絵画の国民的名品が隣り合わせで鑑賞できるという贅沢さ、オールスターゲーム、はたまた紅白歌合戦か?さすが国の宝たちですねぇ。
今回もさらに力を入れて、やや堅めの内容を、私の独断と偏見に満ちた面白?感想記事にしてお届けしたします。

特別展覧会「国宝」京都国立博物館

前回の感想記事では画聖 雪舟先生をさりげにディスってみたけど
誰からも怒られることなく、炎上拡散することもなく、これではDISる売名行為が成立しないただのイタい記事、という残念な結果に。

感想:国宝展 at 京都国立博物館〜雪舟にツッコミを入れてみる

うーん今回はもっと違う方向で、思い切ってみよう。
ということで、流行にのって、国宝も擬人化よー!えいぃ!

わたしたち、室町ティーサロンのアイドル☆
漢の文化と大和の伝統を!優美とみやびを!美しさとトキメキを!レッツ☆ラ☆まぜまぜ!

天目茶碗.jpg

平成も話題独占!プリティーでキラキラ☆なふたりはプリキラ天目
中国生まれの天目茶碗。瑠璃色に輝く類い希な美貌に天下人たちのロマンティックが止まらない。

花入.jpg

崇高で大人な雰囲気にバブみすら感じる、青磁花入
チャイナいちの愛され玉(ぎょく)肌がラグジュアリーな、室町サロンを彩る華たち。

大井戸楽志野.jpg

淡雪肌が尊い…大和撫子、うのはながき(右)
日本生まれの志野茶碗。一見清楚系ながら「歪み」や「削り」など桃山時代の傾(かぶ)きを秘めた隠れ厨ニ

WABI×SABIの波動を感じる!ふじさん(左)
本阿弥光悦が生んだ伝説の白楽茶碗。一度お目にかかりたいなー(今展覧会は欠席です)

威風堂々!ミス桃山にふさわしい大名物、きざえもん(中)
高麗生まれの大井戸茶碗。レアすぎる!かいらぎ・貫入が醸すハイブランド感。
あれ、丈が短くなった?
〜古織先生にお直ししてもらっちゃった・だってミニがかわいいんだもん・てへぺろ☆(・ω<)

ウーン、ますますイタい記事になっちゃったねぇ(´ω`;)

この国宝級アイドルたちが各部屋に配置されていて、企業ブースのバーチャルナビゲーターのようにお出迎え…
というわけではなく、陶磁と絵画が共に並ぶことで、かつての将軍や風流人の見たであろう景色を再現する、国宝展ならではの試みだそうですよ。


さて、気を取り直して、ここから本題ですw

かつて教科書で見た有名品が目白押し「国宝」展に向かうみちすがらもうwktkが止まらない〜
しかし私のような、バイキングであれこれ欲張って一体何を食べたのかよくわからなくなるタイプは、見たいものを絞りこみ集中するのも一つの方法ですね。
前回を反省して、今日は一目散にもっとも見たい「私のメインフロア」へ直行しました。
※ここから画像はWikimedia CommonsのPublic domainを引用しています

■これが見たかった!観音猿鶴図

Guanyin, Monkeys, and Crane
By Muqi Fachang ([1]) [Public domain or Public domain], via Wikimedia Commons

本当にこれが見たかった、観音猿鶴図 (かんのんえんかくず)〜牧谿(もっけい)筆

や、やわらかい…そしてふつくしい…(*´ω`*)
図版などの複製で見るよりずっと奥深い、本当に魂が宿っているかのような描写が素晴らし過ぎます。
特に右幅の子どもを抱くお猿が、かわいい我が子を本当にぎゅっとだきしめているんです。心から愛おしく守っているような気持ちが伝わってくるような…。

中国絵画で「以形写神」という言葉を習いました。
「形を描くを以て、魂(精神や感情)を写す(表現する)というような意味だそうですが、これを見ると本当に説得力あります。

そして左幅は、子を捜して啼く鶴、そう聞くと切ないですね…。
解説によりますと「慈悲深い白衣観音をはさんで、子を探す鶴に子を抱く猿も母性愛に溢れています…」
そうだったのか、私は理解しました。牧谿ワールドの魅力は「少女マンガ」だと!(´ω`)

繊細すぎる描写の鶴に比べて背景の竹がお粗末だと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、これは背景として主役を立てるというよい仕事をしてますよね。
猿の顔がマンガみたいとか、観音の衣紋が筆ペンで描いたみたいとか突っ込み所はありますが、それも含めてとっても魅力的な名作です。

中幅の白衣観音の目線の先が気になりました。フレームアウトした先にいる何かを見ている視線です。
元々屏風か絵巻といった違うレイアウトだったのでしょうか?三幅対は日本で独自に改装されたものが多いと聞きましたので(最初からこの三対の構図でこの視線は不自然だと私は思いましたが…)

ある意味日本人が最も愛した絵画、これぞ眼福!でしたが、観音猿鶴図はなんと京都大徳寺さまで年に一度一般公開されているそうで(ご本尊…少女マンガとか言っちゃ不敬ですね…すいません)また会いに行きたいと思います。

後ほどで紹介する長谷川等伯が強い影響を受けたと言いますが、きっと伊藤若冲も拝見して学んだのではと想像してしまいます。
Rp:生誕300年記念 伊藤若冲展 at相国寺承天閣美術館


■中国絵画の魅力に圧倒される

次に期待が高かったのが中国絵画
極端に少ない筆数で描く「減筆体」で有名な梁楷(りょうかい)は、先ほどの牧谿と並んで日本人が憧れ、後人に深い影響を与えたという画家。和の文化の定番「引き算の美」の源流ですかね?

Liang Kai-Shakyamuni Emerging from the Mountains
By Liang Kai (梁楷) [Public domain], via Wikimedia Commons

出山釈迦図(しゅっさんしゃかず)梁楷(りょうかい)筆

作品はずいぶんリアルにやつれた釈迦の肖像です。仏画などでおなじみの仏陀的な風貌とはほど遠く、むしろ西洋絵画でおなじみゲッセマネのイエスかと思いました。この後居眠りしていたペテロを怒鳴りつけそうな雰囲気ですね。
そう、まるで中世ヨーロッパ絵画の雰囲気すらある写実性。南宋絵画ってすごいなぁ。

しかし背景が手抜きだね…って思いますか?いえいえこの一見デタラメに見える樹枝の描写はすごいテクですよ。
梁楷は凄腕の筆リスト。もし絵画がライブだったら…ここは拍手喝采のPLAYですね!

梁楷は精密な写実と、斬新な水墨を描きわけた天才で、宮廷画家として当時も最高峰だったけど、梁風子(フーテンの梁さん)と呼ばれたヘンジンだったみたいです。他にも画狂人北斎クラスがそこかしこにいるなんて、中国絵画の懐は怖ろしく深い…。


Summer Mountain
By attributed to Hu Zhifu (Yamanashi Prefecture) [Public domain or Public domain], via Wikimedia Commons

夏景山水図 伝胡直夫(こちょくふ)筆 ※伝は伝承の意味

「音を画中に閉じ込めた」という事でした。確かに…「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…」と擬音を被せたら分かりやすいかも(仙人はミケランヂェロ立ちでおなしゃす!)こういう大気の表現大好きです。


Emperor Huizong of Song winter
Emperor Huizong of Song [Public domain or Public domain], via Wikimedia Commons

冬景山水図 伝徽宗(きそう)筆
画中の人物が見ているだろう猿と鳥がどこかに小さく描かれていて、皆さん捜してました。元祖ウォーリーをさがせ!的な。
緻密さと荒々しさの同居、ハイテクニックな筆遣いはさりげなく、モノトーン主体でありながら絶妙な色が入って、非常にシックな美しい絵画。

描いた徽宗は…なんと北宋の皇帝!書画の才に優れ、北宋最高の芸術家だったとか。調べると、院体画というのですが、もうすっごーい!クオリティでホント痺れました。

Songhuizong4
Emperor Huizong of Song [Public domain], via Wikimedia Commons
参考:「芙蓉錦鶏図」徽宗筆(北京故宮博物院所蔵)※日本の国宝ではありません

さらに詩文、書にも優れあらゆる芸術に精通した「風流天子
しかしながら皇帝としての評価は酷いもので、芸術に入れ込みすぎて国を潰してしまったとか。
足利義政@東山文化の、はるかななめ上を行く凄い人物が大陸に存在したんですねぇ。

いやー中国絵画すげーです。日本美術ファンには申し訳無いけど、例えると、Jリーグに比べてセリエAやリーガエスパニョーラ級のスケールの違いでしょうか。
話それますが、カタルーニャ独立で揺れるスペイン、FCバルセロナどうなるんでしょうねぇ…。


■等伯!永徳!応挙!日本スター絵師の競演

さて次は中世絵画。いよいよ例のぼんやりしたやつに対面します。おそらく今の日本古典絵画のベストテン第一位に輝くのはこの作品、といわれるほどの人気。

Hasegawa Tohaku, Pine Trees - low resolution
By 長谷川等伯 (Hasegawa Tōhaku, 1539 - 1610) (Emuseum) [Public domain], via Wikimedia Commons

「松林図屏風」長谷川等伯

さすがにここは人だかり、しかしなぜか皆、この作品を遠くから眺めておりまして間近に近づけない雰囲気。
近寄って拝見すると、こりゃほうきで描いたな!ってぐらい荒々しい筆跡で驚き。雪舟パイセンに負けない豪腕プレイヤーです。松の根っこなど速記メモレベルの走り描き。下絵説があるのもうなずけます。

ところが、遠くから眺めるとじつにいい。日本人の心の琴線に触れる美しさ、幽玄さ。
これが牧谿から学び、咀嚼吸収して描いた「日本の水墨画」の出発点、時代のアンセム(賛歌)へのリフレクション(反響)、牧谿リスペクトから生まれたアンサーですね。

長谷川等伯の生涯は聞く機会が多いですね。地方出身の町絵師が、時代の寵児となって業界最高峰の狩野派と渡り合ったという、下克上の時代を象徴する伝説の数々。
大徳寺、千利休、豊臣秀吉と交わり、狩野派の傑物 永徳相手に一歩も譲らず、戦国の世を絵筆で生き抜いたタフ☆ガイ
まるで戦のような絵仕事の中、最も頼りにしていた長男を失った悲しみの果てに、たどり着いた静寂の世界が「松林図屏風」という物語も。
その長男の作品が隣に…父子で国宝。


Cherry-tree
Hasegawa Kyūzō [Public domain], via Wikimedia Commons

智積院障壁画の内「桜図」長谷川久蔵

秀吉好みの豪華金ぴかの春の景観。落雁(和菓子)を貼り付けたような八重桜が印象的。幹の緑色が渋い。
貴重な作品ですが色落ちが激しいのが残念。しかし、智積院で再現された壁画が庭園で拝見できるので、当時の姿を想像するのにはいいかも。
こちらの壁画が拝観できる智積院は京都博物館のすぐお隣です。


水色巒光図 伝周文(しゅうぶん)
周文は雪舟パイセンの師匠にして、様々な芸術をこなしたというマルチプレイヤー。室町禅宗界の「水墨の若大将」とも(注:盛ってます)特定できる作品は残っていない伝説の画僧とか。

周茂叔愛蓮図 狩野正信
狩野派初代の清く正しく美しい漢画、見事でした。


Birds and flowers of the four seasons
By Kanō Eitoku (狩野永徳) and his father Kanō Shōei (狩野松栄) ([1]) [Public domain], via Wikimedia Commons

聚光院方丈障壁画のうち花鳥図 狩野 永徳

桃山画壇の覇者!狩野派が生んだ稀代の天才絵師、恠恠奇奇(カイカイキキ)の怪物くん!などと形容された(注:盛ってます)狩野永徳
絵をみればこれまた豪腕な筆さばき。しかもヘビー級チャンピオンですな。
戦国絵師のライバル対決!は豪腕のぶつかり合い。気炎を上げる永徳と静かなる等伯、乱世に雌雄を決す羅王と朱鷺…(ry

そういえば、あれから雪舟パイセンの記事を色々読むのですが「乱暴力」とか「意味不明の勢い」とか皆ひどいw言葉で褒め称えていますね 笑)

そう、間近で見れば荒々しい雑多な印象なのに、遠く離れてみたら非常に整っていてしかも強い印象。これが屏風絵マジックかと。
やっぱり現場で生で観ないと分からない事がありますね。描かれた鳥たちが、妙に人間臭いとうか、ほとんどマンガ。ウッドペッカーかカケスのサミーみたくしゃべりだしそうなんです。

これはいくら中世絵画でも、真面目に描いたとは思えませんw 案外、永徳先輩ってお茶目な兄貴だったのかも?って思えてきました。
これを描いた頃はまだ若かったようですし。狩野派のホープとして育ち、豪腕を鍛えつつ、時折茶目っ気もみせる、愉快痛快なダイナマイト☆ガイ
それが晩年、一族の命運をかけた画壇抗争の中心で猛烈に働き、果ての過労死、というのは悲しいですが、男(漢)らしい生き様でもあります。

※絵筆を持った渡り鳥…は雪村でどうですか?

そしてまだ来る大物、円山応挙!

Okyo Pines right
By English: Maruyama Ōkyo (1733-1795)日本語: 円山応挙(1733年- 1795年) (scan by User:Fraxinus2) [Public domain], via Wikimedia Commons

雪松図屏風 円山応挙

これまた至近距離では荒く固い絵だけど、遠目ではリアルではっきりくっきりという不思議。
西洋の遠近法を熟知していたという応挙の描く雪松図は、それまでにない奥行きを備えた3Dな立体感。実際、枝がポリゴンみたいに見えましたw(そこかい)

長々と紹介しましたこれら、長い時を越えて伝えられて来た名作がテーマ別一室それぞれに競演する国宝展は、まさに綺羅星オールスター戦ですね。ほんともう満腹まんぞく。
あ、他の部屋の事も多少、触れておきましょう。

平家納経は豪華絢爛。厳島神社で見たときはさらに凄い印象だったな。
奈良は信貴山からやってきた空飛ぶ護法童子、元祖SF感。ピーエスパー!
平安時代の雅な王朝美術から、院政期は国風文化の最初の爛熟期。この辺りもいいですねぇ。絵巻物大好きごっしー(後白河法皇)人気ありますねぇ。

最も行列が出来ていたのが古代の「金印」裏の畑で正直爺さんが掘り当てたという例のあれですね。
小っちゃ!そして金の輝きがあせない事におどろき。金が世界共通の宝になるわけですね。

おなかいっぱいになってももちろん最初から最後まで国宝を鑑賞しつくしてもとをとったw事はいうまでもありません。
というわけで大変長くなりました。このような駄文に最後までお付き合い下さり、ありがとうございます。
私もこれで益々、日本美術と大陸文化にのめりこみそう。そしてそれを作品に昇華していきますよ。

前回の記事にも、パブリックドメイン画像を付けて分かりやすく?雪舟作品を紹介しています。
感想:国宝展 at 京都国立博物館〜雪舟にツッコミを入れてみる

追記:この記事を書いてる最中、京都博物館よりネット生中継があり、じっくり拝見。
〜京都国立博物館「国宝」展を巡ろう 〜日本の美術の真髄・国宝が大集結〜 ニコニコ生放送

特に企画された研究員さまの生の声と熱意に触れ感動いたしました。
当方こんなとんでもない感想記事でホント申し訳ありません<(_ _)>

美術といえば教養を深めるイメージですが、カジュアルな言葉で皆でわいわい楽しむスタイルもまた良いですね。まさか美術でこんなにおもしろおかしく楽しめるなんて!

私も「月夜」美術番組として復活したいなぁ。

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posted by 月与志(tsuyoshi-jp) at 05:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想:古典
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