2016年11月02日

レポート:呉越国 - 西湖に育まれた文化の精粋 -at大和文華館

正倉院展で賑わう秋の奈良で、中国の仏教美術・工芸品の展示がございます。
奈良市内から少し離れますが、庭園の四季の花々が美しい大和文華館にて。

正倉院の宝物の多くは、中国大陸やその向こうの国々からやってきた貴重な品々。
古代まだ駆け出しの辺境国だった日本は、大陸の進んだ文明を熱心に取り入れ学んでいた、その証のように思えます。

日本の文化、特に古美術に興味を持つなら、中国の文化について知る事は不可欠と常々思ってはいるのですが、
中華文明はあまりに広く長くて深い。なかなか踏み出せずにおりますが(和の文化だけでせいいっぱい)
今回はちょうどよい機会と思いまずは足を運んでみました。


「呉越国 - 西湖に育まれた文化の精粋」
呉越国(907-978年)は10世紀に中国の江南に位置し、越窯青磁や金銀器など美術・工芸において高い技術を持つ一方で、仏教を篤く信奉し、東アジアにおける文化交流に大きな役割を果たしました。建国から北宋に降るまでのわずか約70年の間に輝きを放ち、消えていった呉越国の文化を、仏教美術や工芸品を通して、浮き彫りにします
。〜公式サイトより

私は本当に中国という国や歴史について知らなくて、少しずつ学んでいるところなのですが、
日本史に登場する、隋・唐、元、明、清という歴代の大国の他にも数え切れない程の多くの国々や民族・文化が混在する土地なんですね。
今回の展示でスポットが当たっている呉越国は、10世紀に約70年間だけ存在した国ですが、平和と繁栄、豊穣な文化を築いた国ということでした。
私は文化の成り立ち、文化と社会の関わりに興味がありますので、今回はむしろそんなところに注目していました。

水墨画などでよく登場する画題に「西湖十景」というのがあります。風光明媚な西湖は「地上の楽園」として有名で、日本の文化人の憧れだったそうです(中世の話です)その西湖のある杭州は、資源に恵まれて古来より高い文化が育まれていたということです。
その地域が、10世紀頃の政情不安の一時期、独立国として王が五代続き、奇跡的に平和で豊かな暮らしが営まれました。

よい文化は、平和、豊かさ、よい心が育むものなのか、と思う程、今回展示されている工芸品は美しく優れた印象でした。
特に、青く透明な色合いが美しい「青磁」の、均整のとれた造形と穏やかで理知的なフォルムはまるでモダンデザインのようでした。
貴人が使う化粧入れなどまるで現代の物のよう。SISEIDOとブランド名が入っていてもおかしくない程です。
白玉(しらたま・真珠のことらしい→高級な宝石を指すようです〜※白玉=古来天子の持つ玉とされた最高級の玉)の宝飾品もシックで美しく、人の手が作ったと思えない程の精巧さ。

古代の宝物といえば(正倉院の唐の宝物の多くがそうであるように)装飾過剰で多色使いがデフォなので、このモダンさ(二十世紀的な抽象意識)はどういうことなのか、今の自分の知識では分かりませんが、現代人の私から見るとやはり「呉越国オシャンティー!」と思うばかりです。

IMG_0968.JPG

このオシャンティーな焼き物は「越州青窯」と呼ばれ、王侯文人のニーズが非常に高かったため(茶の湯のオリジナルである喫茶で必須アイテム)産地である呉越国は独立してやっていけた、という事らしい。
特に秘色と呼ばれる名品は貢納品として国の安泰を図るために活用されたとか。たかが器が?とお思いでしょうが…
青磁といえば日本でも室町将軍家などが明国から頂戴した優品を「名物(お宝)」として茶席でみせびらかし…いや披露していたと聞きます。名物ひとつが城一つに匹敵する…このような価値がこの時代にはあったのですね。

高い技術の生産品が一国の平和を維持していたということでしょうか。平和で豊かな生活、そして王は仏教と道教を篤く信仰して治世を作り、仏教を介した国際文化交流も盛んだったとも。
というわけで、平和、豊かさ、よい心が育んだ美しい工芸品、という目で展示品を眺めて参りました。

日本の江戸時代も泰平の世が長く続いたお陰で豊かな文化が育まれました。
でも、戦乱に明け暮れた安土桃山時代は駄目だったのかというとそうでもない。激動の時代に相応しい激しい様式の文化が煮えたぎっていたような…人も文化も面白いものでございます。

話がそれましたが、中華文明の広大な流れのほんの一端に触れた本日でした。

呉越国 - 西湖に育まれた文化の精粋

日本初公開多数ということです。2016年11月13日まで

月与志site
http://tsuyoshi-jp.com

Facebook Artist page「月与志」
http://www.facebook.com/tsuyoshi.art

月与志のカルチャー夜話
http://tsuyoshi-jp.com/activity/media/culture_yawa.html
posted by 月与志(tsuyoshi-jp) at 00:04| Comment(0) | 感想:古典
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。