2016年04月30日

Rp:この男がジブリを支えた。近藤喜文展

2016年GW、大阪阪急うめだ本店で開催されている「この男がジブリを支えた。近藤喜文展」に行ってきましたので、感想をレポートいたします。

展覧会の詳細は↓
この男がジブリを支えた。近藤喜文展日本屈指のアニメーターの仕事に迫る

近藤喜文氏(1950-1998)は、スタジオジブリの高畑 勲・宮崎 駿 両監督から厚い信頼を寄せられ、ジブリを支えてきた日本屈指のアニメーターということです。
展覧会場では、関わってきたアニメーションの原画やイメージボード、スケッチなどが多数展示されていました。
名作劇場やジブリ作品で良く知っていた、あの場面、あのキャラクターなど、沢山でてまいります。

展覧会を通して感じたのは、この方は本当に絵を描くのが好きだったんだなーという事でした。
当たり前ですが、絵が好きでそれを一生の仕事にした方のポートフォリオですから、いろいろ考えさせられます。
私も今回は一人の絵描きとして、それらの仕事に向き合ってまいりました。

【初期のお仕事】
初期のお仕事として印象深かったのは「未来少年コナン」のアクションシーン?の原画。子どもの頃に愉快痛快だった記憶があります。

そして初めて手がけられたという「赤毛のアン」の親しみやすいキャラクターデザイン。スタッフでプリンスエドワード島までロケに行きイメージを膨らませてきたそうです(やはり名作劇場はロケーションしていたんですね!)

「名探偵ホームズ」のイメージボード集。子どもの頃初めてホームズをTVで観た時、それまでのテレビまんが(70年代のアニメの呼称)とはちがう美術の美しさや奥深さに感動した記憶があります。(丁度はじめてジブリ映画を観たときの感動に似ているかも)それらの元になったのが、複数名で大量に描かれたというイメージボードだったのかもしれません。

イメージボードとは、アニメーション作品が作られる前に、作品の方向性を探るために沢山のバラエティ豊かなタッチで描かれるイメージ画ということです。説明によりますと、一つの作品をイメージして「客観的にリアルな」「主観的に、柔らかく愛嬌のある」「抽象的で荒いタッチの」様々なイメージボードが描かれることで、後に作られる作品の奥深さが決まってくるとか。
ジブリの宮崎監督も(制作ドキュメントなどで)イメージボードを重視されていましたので、重要な工程なのでしょう。ここはまさに「絵の持つ力」なのですね。

【洗練されていった技術】
近藤喜文氏のスタジオジブリでのお仕事で感動したのが「火垂るの墓」(88)のキャラクターデザインでした。
大変リアルでありながら親しみやすく、かつシンプルで美しい仕事。あらためてそこをジックリ鑑賞すると、じつに高度な域に達しています。
清太も節子も、ただイメージで描いた似顔絵ではありませんでした。監督の意向をくみ取って細かい所までディティールを検討してデザインされていることが展示から分かります(映画でいう役者さんの役作りに近いかもしれませんね)その上でアニメーションを分業して作る上での設計図的な役割をもっているのがキャラクターデザインなのですね。

さらにここでは、日本人らしい骨格・しぐさ、節子に至っては幼児のそれを研究しキャラ作りに活かしているといいます(動いたとき・物語の経過にあわせてもそれが反映されているとか)
その上、線が非常にシンプルで美しい。というわけで一見すると見過ごしがち(派手な絵と比べて)な所だけど凄い技術だと分かり、感動して原画を見ておりました。

さらに説明によると、近藤氏のキャラクターデザインは、リアリズム表現に、柔らかさや親しみが程よいバランスで含まれている事にあるとありました。
前作「愛の若草物語」(87)も、とても完成度が高いです。西洋人の顔立ちをリアルに描いているにも関わらず我々日本人が受け入れやすい(つまり、かわいい!)と感じる絵になっています。

そこには「リトル・ニモ」での経験が生きているのでは、とありました。「リトル・ニモ」(日米合作)は「大いなる挫折」として紹介されていた仕事です。
挫折からの出発とありましたが、辛い出来事も、時に思いがけない恩恵をもたらす事もある、ということでしょうか。人生の奥深さを感じました。

洗練されていったキャラクターデザインは「おもいでぽろぽろ」(91)でさらに高まります(この時代のアニメのリアル表現に興味深い私です・90年以降は記号化表現が再び主流に・詳しくはまた番組で)

【企画ボード集】
展示には他にも、実現しなかった企画のために描いた絵、近藤氏が個人的に描いた絵、習作などもありこちらも興味深いものでした。
制作直前で頓挫した「退魔戦記」は絵の世界がすっかり出来上がっており、本当にあった作品のような気がします。
その作品のアイデアやイメージを、小さなスケッチブックに細かく描き留めておられました。

また、個人的に描いた絵は(展示はごく一部だと思いますが)洗練されたお仕事の絵とは違う、個人的な興味や試みが感じられ面白かったです。
こういったプライベートで描いた積み重ねもまた、お仕事の奥深い世界観に寄与していたのでしょう。

後年、どこにでもある日常の何気ない風景を描いたシリーズが最後に目を惹きました。
ここにきらめく瞬間を見いだし、作品にできたらいいな、と記しておられたようです。

地道に絵を描くという事を積み重ねてこられたお仕事を、じっくり見つめることのできたよい一時でした。
2016年5月9日まで開催中です。

もっと詳しい感想は、また月曜日の生放送にて。

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posted by 月与志(tsuyoshi-jp) at 17:18| Comment(0) | 感想:サブカルチャー
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