2014年11月23日

墨絵の金字塔、鳥獣人物戯画を拝見してきました

あの有名な「鳥獣人物戯画」の本物を拝見する機会がある、ということで行って参りました。

鳥獣人物戯画は、京都 高山寺に伝わる紙本墨画の国宝絵巻物です。
その卓越した表現から「日本最古の漫画」とも称され、私的には「墨絵の金字塔」と呼びたい名作です。

この秋、明治以来の修復を経て、京都国立博物館で一般公開されています。

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修理完成記念 国宝 鳥獣戯画と高山寺
会期:2014(平成26)年10月7日(火)〜11月24日(月・休)
会場:京都国立博物館 明治古都館

特別展覧会「国宝 鳥獣戯画と高山寺」公式サイト

開館時間前から訪れたのですが、案の定、長蛇の列。
最も有名で人気の「甲巻」を見るためには1〜2時間は必要かもしれません(平日午前中)
(この記事を書いているところで)残すところ最後の連休です、まだの方は気合いを入れてお出かけ下さい。

私の感想ですが、鳥獣人物戯画は原本を拝見できて本当に良かったです。
単純な線画に見えておりましたが、本物はいきいきした生命感が宿っておりました。
それは、線の微妙な変化や、ちょっとしたグレートーンで表現されており、
複製印刷では、この微細な変化が再現できないのではないかと思われます。
図鑑などで見知っていたより、ずっと深みがあり、しっとりした印象でした。

これは、筆者の技量に他なりません。
私もまがりなりにも数年、墨と筆で描いてまいりましたが…この墨絵のあまりの上手さに絶句いたしました。
線が一本の無駄なく生きており、描かれた動物の存在感が描き出されています。
有名なウサギ・カエル・サルなどが擬人化して描かれた「甲巻」は、ユニークなモチーフと、先進性に魅力がありますが、絵の表現力もハンパないです。

様々な動物を描いた「乙巻」では、それがさらに顕著でした。「甲巻」は擬人化(おそらく日本初)されているため、ややマンガ的(今風に言うと)ですが、「乙巻」は動物をリアルに描き出しています。犬など身近な動物から、獅子や麒麟・莫など空想の動物までもがじつにいきいきと描かれておりました。

これが、丙丁巻となりますと、まるで別人の筆によるものとなります。
ユーモアセンスなどは踏襲しているものの、ごく普通の戯画・戯れ絵という感で…。
有名な「甲巻」の魅力は、裏を支える「神技」的な技量に拠るところも大きいのではと考えました。

以上は私の個人的な感想です。

鳥獣人物戯画は、描かれた目的、作者などは一切不明。
描いたのは、鳥羽僧正(とばそうじょう)という平安時代後期の高僧という伝承がありますが、確証は無いようです。
ただ、当代随一の描き手であり、仏教界の要職を歴任しながら、当時の仏教界と政治のあり方に批判的な眼を持っていたともされていて、鳥獣人物戯画は一見単純な明るい笑いの画のようでありながら、深い批判精神を含んでいるという説もあるそうです。

現在は国立博物館に寄託保管されていますが、国宝になる以前は、お寺で希望者が拝見できたなんて話も聞きました。
断簡や模本が存在し、成立時から形(ストーリーなど)が変わっている事、今回の修復で新たな新発見があった事など、興味深いミステリーも色々ありました。

その詳細は、次回の「月与志のカルチャー夜話」でとりあげますのでご期待下さい。

ともあれ、墨絵の最高峰をこの目で拝見した事が、貴重な体験となりました。

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■平成知新館
京都国立博物館の新平常展示館「平成知新館」が2014年9月にオープンしておりました。
京都で広く目にする「古文化」を実に幅広く収集し一同に展示されていました。
観光で訪れるには最適かと思います。

国立の博物館は、東京・京都・奈良にあります。
明治の初め、西洋化・近代化を進めようという風潮の中で、日本の伝統的な文化が軽んじられ、破壊や散逸の危機にさらされた事を憂慮し、文化財保護のため、東京・京都・奈良に国立の博物館が設けられたのだそうです。
現在、東京では国宝展が話題のようですね。

なお、京都国立博物館の直ぐ近くには、豊国神社がございます。
実は京都に縁の深い、豊臣秀吉さんの眠る廟も近隣に。そして幻の「京の大仏」の話も。
この話題は、こちらの記事で。
京の大仏・豊臣秀吉と京都

詳しいお話しは、番組「月与志のカルチャー夜話」でお伝えしておりますので、ぜひご覧下さい。
月与志のカルチャー夜話 第四十五夜 〜墨絵の金字塔、鳥獣人物戯画/京の大仏

月与志site
http://tsuyoshi-jp.com

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月与志のカルチャー夜話
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posted by 月与志(tsuyoshi-jp) at 00:16| Comment(0) | 感想:古典
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