2019年03月13日

おでかけスケッチ〜冬から早春の花〜水仙・梅・桃・桜

前回の続きです。
花枯れる冬に目に止まった花々、そして春を告げる代表的な日本の花をスケッチと共にご紹介します。

190306_桜.jpg

先日、春を告げる花を求めて、橿原は天香具山「万葉の森」へ。
日が悪かったのか寂れているのか誰もいない梅林で、美しい景観を独り占め。
梅のよい香りを感じていると、野生のうぐいすの声が静かに聞こえて…なんとも贅沢なひとときでした。


【梅の花〜咲きはじめたのを見つけた時心躍りました】
春が待ち遠しい。は別名「春告草(はるつげぐさ)とも(草なの?)
梅の実は、梅干し、梅酒など、わりと身近な存在ですね。

桜と並んで和の花の代表的なイメージ。
万葉集では萩と並ぶ人気の花だそうで、古代で花見といえば梅だったとか(桜が人気になるのは平安以降)
白梅紅梅があり、尾形光琳の屏風は有名。水墨画では四君子(竹、梅、菊、蘭)の一つ。

菅原道真公は梅をこよなく愛したということで、天神さまといえば梅なのだそうです(天満宮の神紋は梅)
中華民国(台湾)の国の花。

歌においては古里(ふるさと)を意味する。
ふるさと=故郷の他に、慣れ親しんだ土地、奈良平城京を指すなど、文化的郷愁をさそう花。

190130_紅梅.jpg
人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける 〜紀貫之

今年は梅の香りを楽しみました。



さて、冬の花に戻りますと、
なんといっても椿の上品な可愛さに夢中でした。
詳しくはこちらの記事。

おでかけスケッチ〜椿姫と薔薇姫


季節としては晩秋から冬になるのでしょうか、のお話。

【秋の代名詞的な花〜菊】
改めて見ると豪華な大菊、仏花でみかける中菊、色とりどりの洋菊など種類豊富。葉形が特徴的なのでそれで見分けよう。
昔から園芸が盛んで、菊花展や菊人形などは秋の風物詩(枚方大菊人形がよい思い出・子供心に怖かったけど)
皇室・皇族の菊花紋章は有名で、花言葉は「高貴」。
日本の象徴として見られ、パスポートから和菓子までその意匠が普及。


181211_菊.jpg

心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花 〜凡河内躬恒
白い菊の清廉さがヴァージンスノーのクールさと響き合うよい歌ですね(何で横文字やねん)

古今和歌集に盛んに詠まれるも、万葉集には登場しない事から、飛鳥・奈良時代に菊は無かった(私的にここ重要)
明治期に欧州へ輸出され洋菊が広まる。椿(カメオ)といいこの時代の日本文化ブームは美術だけではなかったのですね。

ちなみに秋の花はこんな感じでした。
おでかけスケッチ〜秋の草花


そして冬の花でもうひとつのお気に入りになったのが水仙
高雅なイメージと、絵になる美しい容姿がもうきらヤバ☆

【清楚な冬の花〜水仙】
雪中花、または早春の花とも。花形、葉形とも個性があって描きやすいです。
中国では仙人を意味する花。寒中に白く咲き芳香を漂わせる事などから、清浄高雅な花として愛され画に描かれたとか。
なんとなく和花のイメージでしたが、シルクロードを経由して渡来。万葉集には登場しない。
原産は地中海沿岸で、ギリシア神話ナルキッソス(ナルシストの由来)に登場する花でした。


190108_すいせん.jpg
白鳥が 生みたるものの ここちして 朝夕めづる 水仙の花 〜与謝野晶子


【希望の象徴〜水仙】
清楚な白さが気に入って引き続き「水仙」
欧米では水仙は「希望」のシンボルだそうです。イギリスはウェールズの国章にも。

水仙の原種、ペーパーホワイトこと白花水仙はさらに真っ白な水仙。

190114_白花水仙.jpg

白い水仙というと思い出すのが、1981年のアニメ「ハロー!サンディベル
キャンディ・キャンディ以来のヨーロッパを舞台にした少女大河ロマン作品において母の形見=白い水仙が重要なイメージとして使われていました。
ED「白い水仙」は黄金コンビ=渡辺岳夫(作曲)×堀江美都子(歌) 両氏の集大成であり、昭和少女アニメソングがたどり着いた最高峰だと思います(突然のサブカルネタ投入)


では、待望の春を告げる花々へ。

【女性を思わせる桃の花】

梅とそっくりで見分ける自信がまだ無い桃の花。観賞用は「花桃」というそうです。
ひな祭りと、日常で桃の実を食べるぐらいしか縁がない「桃」がどのような花なのか?この春は探してみよう。
紅白の花が入り乱れて咲く「源平桃」見てみたいなぁ!

桃というと…桃の節句のひな祭、桃尻娘、菊池桃子、ももクロ、キュアピーチ、などなど、女子のイメージが強い「桃」ですが、
女子の好むピンクだけが理由ではなく、多く実を付ける(多産)が女性にとって縁起が良いからということでした。

桃の花はかなり古くから日本にもあったようで、古事記の黄泉比良坂の桃の木や、卑弥呼の鬼道に桃が使われた(奈良の古墳で桃の種が大量出土)という話を思いだします。あと、桃太郎の鬼退治などもね。
古代中国では魔除、厄除、長寿の象徴だった桃。桃源郷や三国志の桃園の誓いなど。梅や桜以上にエピソードの多い花なのではないかと思います。


190312_桃.jpg
春の園 紅にほふ桃の花 下照る道に 出で立つをとめ 〜大伴家持


【早咲きの河津桜が見頃でした】
いよいよ春間近、花の季節が楽しみです。日本の花の代表といえば「
開花が早い河津桜(カワヅザクラ)が馬見公園で見頃でしたのでいち早く写生。

桜の銘木、名所は数知れず、国民的人気の桜ですが、日本の「国の花」…ではなかったとは驚き(日本の国花は正式に存在しないそうです)しかしながら、菊とともに事実上日本を象徴する花として知るところ。その理由は…?

一斉に咲き誇り散って行く儚さや潔さ。
もののあはれ」と、本居宣長が日本人の心に例えたのが江戸時代。

古くから日本に存在した花らしいのですが、平安時代の国風文化の熟成と共に特別な花となったとか。
桜を愛しすぎる著名人、嵯峨天皇、歌人西行法師、宮中の桜を盗み出した藤原定家、興福寺の八重桜窃取未遂の藤原彰子と、桜は人の心を惑わす象徴としてもあり。

ちなみに古の和歌に数多く詠まれたのはヤマザクラ
現在主流のソメイヨシノが広まったのは明治以降の事。
江戸の染井村生まれの「染井吉野」は「大和の吉野山」にちなんで命名。
奈良の桜の名所吉野の桜の主流は、昔も今もヤマザクラ(ここ重要)

四月に咲く桜は、人生の転機を彩る花として私たちの記憶に鮮やかです。
身近な所では、百円硬貨の意匠、多くの公的機関のシンボル、学校の校章、新旧軍隊の徽章にも多く用いられています。

雪月花、花吹雪、花は桜木、千本桜…さくらさくらは古歌からPOPsの桜歌まで、つねに身近な存在ですね。


190306_桜.jpg
ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心(しづごころ)なく 花 の散るらむ 〜紀友則


あいかわらず余裕のない生活の中、春を告げる花の姿と香りに、心いやされる瞬間がありました。
そういえば、先日ご逝去されたドナルド・キーン氏(日本文学と日本文化研究の第一人者)が、源氏物語に描かれていた「日本の美しい生活」に心から惹かれたというような事をおっしゃっていましたね。

自然を感じる、季節を感じる、美しい清浄な日常。
せめて私の絵の世界では、そんなビジョンをお届けできるようなものを描きたい、と思います。(私も普段の生活からはほど遠いですけどね、ぐは!)

今回のスケッチは、日本の花と歌シリーズで活かしたいと思いますので、お楽しみに。

墨絵アートてぬぐい〜2019早春・椿・梅・龍虎


月与志site
http://tsuyoshi-jp.com

Facebook Artist page「月与志」
http://www.facebook.com/tsuyoshi.art

tumblr
https://tsuyoshi-jp.tumblr.com/
posted by 月与志(tsuyoshi-jp) at 19:02| Comment(0) | TrackBack(0) | ドローイング・スケッチ・ラクガキ

2019年03月06日

おでかけスケッチ〜椿姫と薔薇姫

この冬もしっかり花の魅力を追いかけておりました。
花枯れる冬、だからこそ目に止まる健気な花々があるんですね。
今年は椿に夢中でした。

万博記念公園につばきの森という素敵な場所がありまして、様々な品種の椿や山茶花(さざんか)を拝見しました。
案内によると、かつて椿は「東洋の薔薇」ともてはやされたそうで、同園に沢山ある「薔薇」と比べつつスケッチ。
ゴージャス!な薔薇と比べると、やはり椿はどこか簡素な上品さがある気がします。

つばき姫.jpg

私のイメージですが…椿姫。香りが少なくつつしまやか。
あるいはココ・シャネルが愛したカメリアから、優美で強さを感じさせるようなお嬢様。

薔薇姫.jpg

一方、薔薇姫は、やはり西洋のクラシカルで豪奢な雰囲気が似合うだろうなぁ。
…と、優雅な名を冠した品種が沢山ある薔薇たちを鑑賞しながら想像(妄想)したものです。


【プリンセスミチコ・ピンクピース】
薔薇といっても実にたくさんの品種があるようで。
濃いオレンジ色のバラ「プリンセスミチコ」は、皇太子妃時代に美智子さまへイギリスから献呈された品種。
鮮やかなピンクのバラ「ピンクピース」性質の強健さから十傑の一つに数えられる、とか(何の十傑だろう)
LOVE」というバラもあるそうで、これを贈れば「幸せゲット」できそうだなぁ。
花って本当に奥深いものですねぇ。

190220_プリンセスミチコ・ピンクピース.jpg



【乙女山茶花・桃割れ椿】
椿の森で目に留まった、可愛いらしい品種。
乙女山茶花(さざんか)」は名前の通り可憐なイメージ。乙女椿というのもあるそうです。
桃割れ」は日本髪「桃割れ」に似ていることから命名された椿。

天津風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ
をとめの姿 しばしとどめむ
僧正遍照〜古今集


190220_乙女山茶花・桃割れ.jpg


181203_さざんか.jpg


【冬の花と言えば…椿】
花枯れる季節に咲き誇る鮮やかな赤に元気づけられますね。
お茶席で馴染みのスタンダードな椿(冬は茶花の女王と呼ばれているとか)の他、
名のごとく可憐な千重咲きの「乙女椿」、白斑絞りが美しい江戸ツバキ「岩根絞」など様々。
垣根に利用される「寒椿」はよく見かけますね。

古くから日本に在り、海石榴(つばき)とも。
江戸期に園芸品種で広まる、狩野山楽筆「百椿図」は素晴らしい!

和歌の世界では「つらつら椿
巨勢は、現在の御所市古瀬の辺りだそうです。

巨勢山の つらつら椿 つらつらに 見つつ偲(しの)はな 巨勢の春野を 〜坂門人足(万葉集)

ちなみに「つらつら椿」は巨匠の名句を引用して新しい歌を作る「本歌取り」だったとか。いまのPOPSと同じ事してたんだねぇ。

181224_つばき.jpg


秋はこんなかんじでした。
おでかけスケッチ〜秋の草花

そして冬が終わって、次は早い春を告げる花々を描きます。

おでかけスケッチ〜冬から早春の花〜水仙・梅・桃・桜

月与志site
http://tsuyoshi-jp.com

Facebook Artist page「月与志」
http://www.facebook.com/tsuyoshi.art

tumblr
https://tsuyoshi-jp.tumblr.com/
posted by 月与志(tsuyoshi-jp) at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | ドローイング・スケッチ・ラクガキ

2019年03月04日

感想:大亦観風『万葉集画撰』を辿る at奈良県立万葉文化館

地元奈良の明日香村に、奈良県立万葉文化館という施設がございます。
日本最古の歌集『万葉集』をテーマにした文化施設で、特にこちらの「万葉ミュージアム」では個人的に興味深い展示がよく行われておりまして、よく通っております。

IMG_7247.JPG

明日香村はどの季節に訪れても自然が美しく、穏やかな風景が広がってほっとできる大好きな土地です。
花と風景のスケッチをするようになってからは、万葉文化館の、万葉の草木を植栽したという庭園がお気に入りの一つです。

そして「万葉ミュージアム」は非常に広く、大きい規模の美術展示が地元でも見られるという、中南和地域の日本画好きにはありがたい施設ですね。

私の記憶に残っている中では、改装中の京都市立美術館から巡って来た「特別展 京都市美術館名品展 美人画100年の系譜 美の継承―万葉日本画へ続く流れ」にて、京都画壇の名作をたっぷり拝見、これはとてもありがたかったなぁ。

そして現代日本画家の三瀬夏之介氏の展示。巨大な作品群鑑賞は万葉文化館の広いスペースあったればこそ、でした。

定番の万葉日本画コレクションも、毎年の楽しみのひとつ。
Rp:すべて見せます万葉日本画〜風景〜at奈良県立万葉文化館

その他、万葉集とその時代をわかりやすく紹介する展示室や、情報図書館、ミュージアムショップ、調査・研究を行う万葉古代学研究所もある、とか。

近辺には古代ロマン漂う飛鳥の名所がありますので、巡り歩く拠点にするのにも良いですよ。古代の魅力に触れにぜひ一度訪れてみてください。

2001年9月15日に開館。“万葉のふるさと”である奈良にふさわしい総合文化拠点を設置の趣旨として整備され、古代文化の魅力を視覚的にわかりやすく紹介する。
奈良県立万葉文化館

IMG_8269.JPG


さて、やまと歌に興味を深めている今日この頃の私ですが。
墨絵アートてぬぐい〜2019早春・椿・梅・龍虎

「万葉集」の世界をもっと深めたい、という今の気分にぴったりの展示がございました。
以下、いつものノリの感想でプルンす(´ω`)

【大亦観風『万葉集画撰』を辿る】

画・書一体の美しい万葉画を拝見できると期待して行って参りました。
日本画家 大亦観風(おおまたかんぷう)氏が万葉学者と相談して内容を検討、じっくり構想を立てた後、日本全国の万葉縁の地を巡ってスケッチを重ね、昭和15年(1940年)完成させた、それが「万葉集画撰」(まんようしゅうがせん)でした。
冒頭では芸術性の高さを第一に考え、物語の挿絵や風俗画とは一線を画するものというような事が述べられていました。

恥ずかしながらよく知らなかった万葉集の世界を全七十一図の絵と書でひととおり体験。
大君が娘にコクる「名告らせね」の冒頭から、大和三山サンカク関係相争い、実は戯れの恋歌?紫野行き標野行き、天の香具山の衣はほすてふに非ずほしたり、不尽の高嶺は真白にそ、ラップ調のヲくララは今は罷ラム子泣くラム、大仏開眼、古代らしい大らかというか赤裸々すぎる愛の歌から、貧しさに負けた世間に負けたのフォークソング、海は死にますか山は死にますかの防人の歌まで、いろいろ違うけどだいたい理解しましたよ!万葉の世界(おい)

そんな調子で楽しく見ていたら様子が変わったのが展示のクライマックス辺り。
万葉集編者といわれる歌人大伴家持(おおとものやかもち)の長歌「海行かば 水漬く屍 山行かば 草生す屍 大君の辺にこそ死なめ かへりみはせじ」大和朝廷以来天皇家を守る武門の家柄、大伴氏らしい歌なのですが、これが先の大戦中に国民精神を鼓舞する国民歌謡「海行かば」として引用されたといいます。

そして最後の歌「新しき年の初めの初春の 今日降る雪のいやしけ吉事」を、皇室の繁栄を願う言祝ぎ(ことほぎ)として締めくくられておりました。万葉集画撰は紀元二千六百年記念行事として制作されたといいます、古事記と同じく、長く続く伝統的な文化にはこういった時代があったという歴史的事実を知っておく必要がありますね。

それはともかく、少し聞きかじっただけでは分からない奥深き万葉の世界。
せかっく奈良に住み、近隣に立派な施設もあるのだから、少しずつ作品とともに深めて行きたいなぁ。
まずは、万葉の花から。

おでかけスケッチ〜秋の草花

IMG_7251.JPG

2019年4月1日追記
新しい元号が「令和(れいわ)」と発表されました。万葉集由来だそうです。
典拠は奈良時代に完成した日本に現存する最古の歌集「万葉集」。日本で記された国書に由来する元号は確認できる限り初めてとなる。
万葉集にある歌の序文「初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす」(書き下し文)から二文字をとった。
〜朝日新聞ニュースより

早速「令和」をテーマにした作品を作りたいと思います。

月与志site
http://tsuyoshi-jp.com

Facebook Artist page「月与志」
http://www.facebook.com/tsuyoshi.art

tumblr
https://tsuyoshi-jp.tumblr.com/
posted by 月与志(tsuyoshi-jp) at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想:古典