開館記念展part5「物語とうたにあそぶ」やまと絵と和歌の優美な調和を感じてまいりました。
普段は五重塔より高い建物のない奈良に居るので、都会に出てくるとなんだか居心地悪いのですがw
フェスティバルタワーという当世最新の塔に登ったら、そこには思いがけなく詫びた茶室が…。
2018年三月にオープンした新しい美術館だけに、美しく上品な空間という印象。
超高透過ガラスと、暗めの照明設定で作品鑑賞に浸れるという狙いがあるのでしょう、歌と物語の世界をたっぷり堪能いたしました。
→中之島香雪美術館 開館記念展「 珠玉の村山コレクション 〜愛し、守り、伝えた〜 」V 物語とうたにあそぶ
展示は絵巻と書跡が中心で、やまと絵と和歌の優れた作品が続々と。
この最近興味が高まっているジャンルでもう私的にドストライク!!
ぎゅーんと言魂がしゃうとするのです!
→墨絵アートてぬぐい〜龍田川紅葉
【フリースタイル和様書の世界】
まず最初に遭遇するのは藤原定家(小倉百人一首の撰者)の名高き小倉色紙。
正方形に近い色紙にほぼ両端揃え、ひらがな等間隔、太め強めな印象の書風(定家様〜ていかよう)は、鎌倉武家の時代の書ということです。
やはり好きなのはズバリ平安朝のかなの雅。
高野切れ(古今和歌集最古の写本・秀吉さんが高野山に伝えた事から)の(伝)紀貫之や、三跡 小野道風の、針金のようにシャープで柔らかい書跡にゾクゾク。
歌の作者の肖像と和歌を組み合わせた「歌仙図」がさらに面白い(江戸期以降は小倉百人一首のカルタなどでお馴染み)
漢字・仮名・変体仮名を自在に組み合わせて、濃淡や大小、疎密、行間の変化を立体的に考えてほぼ即興で書くという…
それがさらに人物絵と呼応するとかほぼレイアウトデザインの世界ですわ。
いわゆる散らし書きという感覚は日本独特の美で、本家中国の書ではまずありえないんだとか(そもそも仮名がない)
それにしても、この自由気ままな改行、配置、変形(かなを曲げたり伸ばしたり)とか…中世の宮廷人フリースタイル具合がはんパナいの!
最近変体仮名(へんたいがな)を少し解するようになりまして、すると暗号にしか見えなかった仮名がしっくり来るようになりまして…
そうなると逆に、平仮名(ひらがな)だけで書いたものはちょっと普通というか、物足りなくなってきたんです。
やっぱりここぞという所にヘンタイを配するとキマるんですよね、以前は読めない仮名は敷居が高い、なんだかいけ好かない、お高くとまりやがって!って思ってたんですがねw
私も立派なヘンタイ紳士に足を踏み入れつつあるのでしょうか。
書のグラフィックな魅力だけではなく、歌そのものも味わい深く面白く、それが絵や書風と響き合うところが、やまと絵&やまと歌が共に在ったという意義なのでしょう。
やまと絵が伝統的に記号的(非写実)なのは、歌や物語との関わりが深かったからではないかと思いました。
歌というのは考えてみると象徴的で記号的な言葉の表現ですからねぇ。
和歌の世界で紅葉といえば竜田川、桜といえば吉野山、山吹といえばぶっきー(フレプリ)ぢゃなかった井手の玉川。
そんな共通認識を利用して、工芸品などの意匠で読み解き遊びを盛り込んだり…源氏物語の表紙の装丁は豪華で美しかったなぁ。
和歌が書かれなかった空白が未完成感のある歌仙図は、珍しい写実的な肖像…と思ったら(伝)円山応挙筆でした。
そういえば、歌仙図といえば讃岐の国の金刀比羅さん、あそこには円山応挙・伊藤若冲もあったなぁとふと思い出した。
→香川アートスポット〜金刀比羅宮
【めくるめく絵巻物の世界】
流麗なかな書に静かに興奮しておりましたが、やまと絵もまた素敵でした。定番の源氏物語はいわずもなが。
ずっとみたかった岩佐又兵衛の肉筆画を拝見。保存状態が良いのか、金銀の本来の効果が保たれていてデモーッルト良い!
特に、精密に描かれた武人達の輪郭線が金で輝いてる。やまと絵独特の濃彩色と、金泥の霞の輝きが、本来はキラキラこのように調和しているのかとわかる逸品でした。キラやば〜っ☆
江戸初期の絵師、岩佐又兵衛は人々の喜怒哀楽を描くことで浮世絵の祖とされる(と、へうげもので読んだ)
描いた堀江物語絵巻は武人の仇討ちの物語、侍は元々は貴族に雇われていた私兵で荒事の当事者だったとか、そんな事を思い出させるやや荒ぶる武人像でした。
そんな侍層の中にも黄金の志を抱いた若者がいた、この源頼朝には正しいと信じる夢がある!平家のボスを倒しサムライスターに…略)
浦島物語絵巻、漁師なのにまるで貴族のような生活で描かれているの笑ったw auも驚く荒唐無稽。
池田孤村が描く平安歌人 赤染衛門は美人さんでした。美しい和歌を詠むというだけでときめくという平安貴族の妄想、分かる気がしてきたw
コレクションは中近世のやまと絵が多いそうなのですが、古美術的な価値はともかく、劣化の少ない美しい絵は鑑賞にはよいと思う。
紅葉の小袖がおしゃんてぃーな立ち美人図、「竜田越え」の意が込められているという。
後ほど、伊勢物語の段で詳しい話を知りました。筒井筒で結ばれた夫婦のお話し。
「風吹けばおきつ白波たつた山 夜半にや君がひとりこゆらん」
浮気に出かける旦那の道中を、健気な妻が身を案じて詠んだ歌、そんな物語がこの絵に描かれた女性には含まれていた、奥深いものですねぇ。
伊勢物語のやまと絵、人物はかわいくデフォルメ、でも描写は意外に精密…それって萌絵と同じやん!日本の中世絵画って未熟だから描写が拙いのだと思ってたけど、そうじゃなくあくまでkawaiiのが好きな民族性だったんだねぇw
おっと、有名な絵師の作品もありました。
江戸淋派の祖 酒井抱一の短冊。なんともやわらかくグラフィカルでさすがの優美さでした。
そして葛飾北斎の肉筆画帳。まるでグラビア印刷のようなクオリティでほんとに肉筆画なの!?これぞ神業ですねぇ。
→感想:葛飾北斎〜富士を超えてatあべのハルカス美術館
【中之島香雪美術館】
そんなわけで、有名所も押さえている優品コレクションが、開館記念割引き(ポスカをどこかでゲットした)で800円で楽しめるとかもう十分すぎました。(このジャンルに興味があれば、でしょうけども…)
大阪の新しい美術館、おすすめです。2019年春は鳥獣戯画の特別公開もあるそうですよ(明恵のみた夢の展覧会)
京都博物館で拝見したときの記事
→墨絵の金字塔、鳥獣人物戯画を拝見してきました
コレクションにはフーテンの梁さん(梁風子=梁楷)の「布袋図」もあるそうです(東山御物・重文)お土産のパッケージになってたw
→感想:国宝展 at 京都国立博物館〜等伯×永徳・牧谿×梁楷 水墨画オールスター祭りだよ!
香雪美術館は、朝日新聞社の創業者、村山龍平(号:香雪)氏が収集された美術品を展示する施設ということで、コレクションはこれらの他に、数寄者らしい刀剣などの武具・茶器・書跡・仏教美術が中心。
朝日新聞って大阪だったんですねぇ。フェスティバルホール、甲子園の全国高校野球、東洋古美術誌「國華」の支援など、様々な文化的後援もされているとか。
館内にはお茶室がまるっと再現、古田織部の茶室「燕庵」の写しだそうです(藪内流燕庵→玄庵→中之島玄庵イマココ)
「燕庵」(えんなん)というと、客人のお供(ご家来衆)の相伴席を設けたという事で、戦国の世で利休居士が主客の立場や身分の差を超えた密接な場として発展させた茶室を、古織殿が新たな江戸の武家社会にあわせて変えたとか師の意志を曲げたとか(と、へうげもので読んだ)いわれてたアレですね。
戦国の世に発達した茶室は、戦の合間にほっと心を和ませる空間として多忙でストレスフルな大名武将達に必要とされたのだろう…と、再現された茶室を眺め思いを馳せつつ、大阪ビジネス街ど真ん中のこの美術館はまさに市中の山居でした。
日本美術の優美な世界に浸ったら、さぁ年末の追い込みにいざゆかん!
(と、いいつつこんな長文書いてしまったオレ乙)
中之島玄庵
追記2019年2月
二回目の「物語とうたにあそぶ」へ。岩佐又兵衛の絵巻や北斎肉筆画帳の別画を拝見。でもそれ以上にかなの達人の優雅な書跡を眺めるのがディ・モールト心地よい!
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