2017年08月29日

感想:書の源流企画展「榊莫山と紫舟のシンフォニー(交響)」at奈良県立美術館

奈良市の町中では今も墨筆で描かれた古風な看板が沢山あり目を愉しませてくれます。そこでよく目にする「脱力系」の書。
かの東大寺も有名な南大門の石碑から二月堂などは、お子さまが揮毫したのかな?というような天真爛漫な書をお見かけいたします。
近隣の有名な寺院はどこも品格溢れる書に触れる事ができ、さすナラ(流石!奈良)町そのものが博物館!なのですが、これでいいのか東大寺?と思う方も少なくないかもしれませんね。
 
これらの個性的な書は、榊莫山(さかき ばくざん)先生によるものだと近年知りました。
ばくざん先生」として親しまれている前衛書道の大家、90年代中頃に宝酒造のCMなどでお茶の間にも知られたお方だったそうです。
常々そのお名前と、個性的な書と墨画、それに相応しい個性的なお人柄を見聞きしていたのですが、今回の奈良県立美術館の展覧会で、初めてその全貌を知る事になりました。

まずその代表作は「土!土!土!」土ひと文字を書き続けて20年。わたしのごとき素人には全部同じ「土」にみえるのですが…(´ω`)
文字の成り立ちである原初的な「土」のイメージをつかみ表そうと書き続けたという、なんだか土の匂いがするような力強く暖かな、絵のような書でした。
(おなじく「女」ひと文字も書き続けて20年だそうで…それって結構色っぽいお話しですなぁ)
そのほか日々の畑仕事の絵日記とでもいうような俳画?など、じつにほのぼの癒される画風なのですが。

ところがばくざん先生は、若いときに既に一流と認められ、前衛的な芸術家としての道を歩んだ方なのでした。
〜20歳代で書道界の最高賞を次々に受賞したが「集団を組むと堕落する。孤独でなければ見えるものが見えなくなる」と野に下った…
ということらしい。

そういえば、法隆寺 百済観音のイメージを「書」で表現したという作品は、品格があり前衛的でしびれるぐらいかっこいいものでした。
すっごーい!先生はゆるきゃらばかりではなかったんですねぇ。

…あいかわらず不遜な文章を綴っております、物を知らない若輩者ですので…申し訳ありません<(_ _)>

飄々としたイメージは、孤高の道をゆく気高さと表裏なのでしょうか、ばくざん先生が憧れたのは中国の文人や良寛など、世俗を嫌い天衣無縫に生き創作した人々のようです。
それが最も現れたキャラクターが、展覧会のメインイメージ画にもなった「寒山拾得」でしょうか。

寒山拾得S.jpg
※こちらは愚生の模写?であります

寒山拾得」(かんざんじっとく)世俗を超越した中国伝説上の二人の詩僧。
中国文化の画題として最も愛されてきた「キャラクター」なのだそうです。

牧谿の国宝「猿猴図」から派生した「おさるフレンズ」(by 永青文庫のおねえさん)といい、中世のお絵かきシーンにも有名なキャラが存在したのですね。

ところで、ばくざん先生の描くゆるーい線でどこまでも自由闊達な画にはとても心惹かれます。
いわゆる「上手いと褒められる絵」より「一見下手、だけど味がある」という絵に憧れを抱くのは、わたしがヘタウマ画を経験した昭和生まれだからでしょうか。
わたしも「上手く描けるようになりたい」という一心で描き続けているのですが「下手と思われたくない」という思いもなかなか捨てられません。

そんな未熟な私ですが…今回ばくざん先生の書画を拝見して思った事は、そもそも「ウマい・ヘタではない」
とらわれず、自由であることの豊かさ
きっとそういう事なのかな、とぼんやり考えました。

そして、紫舟さんの書彫刻、初めて拝見しました。
話には聞いていて想像していたものと、実際に体験したものはやはり違っていて新鮮な驚き…ぎりぎり文字、というのがおもしろかったです。
モデラー心がうずきました(´ω`)私もいつか墨絵を立体化してみたいものです。

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2017年08月22日

感想:生誕100年 長沢節展 at 弥生美術館

更新が随分と遅くなりました。春の東京レポート「ヲノヴォリ」編の最後です。

2017年4月、東京 弥生美術館で開催された「生誕100年 長沢節展ーデッサンの名手、セツ・モードセミナーのカリスマ校長ー」に行ってきました。

細くて、軽くて、弱いからこそ美しい−。
独特の美意識で流麗なイラストを描き、日本のファッション・イラストレーション界をけん引した長沢節(1917-1999)。
固定観念にとらわれないユニークな〈セツ美学〉は、ものの考え方、暮らし方全般にもおよび、主宰した美術学校セツ・モードセミナーでは多くの若者たちに感化を与えました。
長沢節の生誕100年を機に〈セツ美学〉の全貌に迫ります。
公式サイトより


東京文京区にある弥生美術館へは初めて訪れました。いつも興味深い展示を企画されていて関西にいながらも気になっていた美術館です。
まずは竹久夢二美術館で大正モダンの世界に浸りました。
折しもミュシャ展を堪能していたので、大正・昭和モダンに興味を深めているところです。

そして長沢節展へ。
ファッションに疎い私ですので、長沢節先生のことはこれまで存知あげませんでしたが、
人物クロッキーなどをやっていると、時折目にするものすごいかっこいい人物デッサン画がありまして、それが長沢節の描いたものだ、と噂はかねがね。
会場では生のデッサンが多数展示されていまして、ホントに見事な描写っぷり、特に線の心地よさに酔いしれました(´ω`)
ちなみに節先生は墨と筆で描く名手だったそうです。

おっと、それだけではありません、今回の目玉は「憧れの60年代」の東京ファッションショー(再現)を拝見する事でした。

「生誕100年 長沢節展」は4月23日で閉校するセツ・モードセミナーが公式で開催する最後の展覧会となり、約300点の作品に加えて、非公開とされてきた校内の写真が展示。
長沢節が1967年にプロデュースしたファッションショー「モノ・セックス・モード・ショウ」を再現。



■モノ・セックス・モード・ショウ

1967年、長沢節が開催した挑発的な試みが<モノセックスモードショウ>だ。
ガリガリに瘦せた細い男性にスカートを履かせ、半裸ともいえる状態の衣服を着たモデルが闊歩するファッションショーは世間の度肝を抜いた。
男女の区別なく、人体の細くて長くてごつごつした部分にセックスアピールを感じる自らの嗜好と、社会における男女差別やアメリカによるベトナム侵攻など、強者が弱者を圧する権威主義への反抗心から生み出された、長沢節らしいデモンストレーション…(展覧会のカタログ本より)


ね、実に60年代らしいパフォーマンスですよねぇ。

美術館のギャラリースペースを舞台としてショーは行われました。モデルさんが階上から降りてくる様は、発表当時のワシントン靴店銀座本店(当時世界最大級の靴店で、売り場にエスカレーターがあって話題になったとか)の雰囲気を再現したのでしょうか。
ショー音楽が無いのは節先生こだわりとも。そういったショーアップされない素朴さが新鮮でした(節先生が体験した昔のパリモードの雰囲気なのでしょうか)
今風の舞台や派手な音楽がなくても、モデルと服が格好良くて迫力があり、強くテーマが伝わってくる良いステージでした。

モノセックス=細くて弱いものこそが洗練された知性的な存在である
そこにこめられた「男らしさ」への批評。これは50年経っても通用するテーマだと感じます、というか未だに人の意識が大きく変わっていないことが問題ですね…。


その後、展覧会のカタログ本「長沢節 デッサンの名手、セツ・モードセミナーのカリスマ校長」(内田静枝編)をしっかり読みました。
美しいデッサン画の秘密は…人体美へのこだわり。その偏愛っぷりは男女わけへだてなく、ほぼフェティシズムの領域でちょっとビビりましたが 笑)なぜその人が美しく見えるのか、そのヒントが掴めた気がします。

そしてその絵以上に、かなりユニークというか魅力的な長沢節先生。枠に収まらない存在感がその語録や逸話から伝わって来ます。
有名なセツモードセミナーも、節先生と共に学ぶ私塾。それは絵のテクニックとかではなく、いってみれば「自由を尊ぶ精神」というような事だったのでは、と思ったり。

個人的には大正生まれの節先生の人生録〜故郷は会津若松・白虎隊失格の中学生の孤独・戦前の自由でリベラルな校風の文化学院・モダンボーイ・戦中下のダンスパーティー・戦後のアトリエ村池袋モンパルナス・戦後の空前の洋裁ブーム・水彩画家からスタイル画・ファッションイラストレーターへ・モードの都パリへ飛び込んでゆく話とか、興味深かったです。
50〜60年代の東京人のパリモードへの憧れはすさまじい。当時のファッションに関わる人々の情熱は激しかったのだなと。
日本が熱かった時代を想像してみました。

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こちらは向学の為、節先生のデッサンを模写したものです。


以上、東京レポート「ヲノヴォリ」編でした。
感想:ミュシャ展 at国立新美術館
→感想:大エルミタージュ美術館展 at森アーツセンターギャラリー
感想:すみだ北斎美術館

■最近の事
blogも随分間が空いてしまいましたが、こつこつと更新していきますので、どうぞよろしく。
Deers Nara StudioのCloseに伴い「月与志のカルチャー夜話」は只今充電休止中でございます。
2017年は、秋の正倉院展に向けて、墨絵Artてぬぐいシリーズの充実を目指し、力を入れております。
そんな折、水墨画マイブームです。特に中国水墨画は本当に凄い(いまさらですが)今年は西洋絵画に目を向けると言いながら早速方向転換という 笑)
以前のようにダイレクトに「今」をお伝え出来ないのは残念ですが、長い目で見ていてくだされば幸いです。

2017年 晩夏

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2017年08月08日

朱鳥さま 墨絵アートてぬぐい 2017夏

お待たせしておりました、墨絵アートてぬぐい2017年夏柄出ております。

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最近は品薄状態が続いており申し訳ありません。
今年はこちらの墨絵の展開に力を入れるべく、少しずつ準備を進めている所です。
今までに無かった新柄を描いて行きますので、どうぞご期待下さい。

出来上がり次第随時お納めしておりますが、手描きですので数に限りがございます、予めご了承ください。

詳細は以前の記事をご覧下さい
朱鳥さま 墨絵アートてぬぐいのご案内

月与志|手描き墨絵てぬぐい

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近隣の奈良公園では、夏の風物詩 燈花会(とうかえ)が始まりました。
お出かけの際にはお店にもぜひお立ちより下さい。

なら燈花会の初日に「奈良県×文化服装学院ファッションショー「悠迦利(ユウカリ)」を拝見しました。
東京でファッションを学ぶ学生たちによる奈良をテーマにしたファッションショー。

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ショーでは「朱鳥」さまの手ぬぐいが大胆にドレスに仕立てられておりました。
※こちらは私の印象スケッチです

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若い感性にかかると、見慣れた古都奈良のモティーフがずいぶんあかぬけてリメイクされるもので、大変刺激をうけます。
私も負けずに、もっと大胆にテーマに向き合いたいと思います。

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