2017年02月28日

月与志のカルチャー夜話 第八十六夜 〜青春アニメ80's:オールドスクール・アニメ05

月与志がお送りする、知的好奇心を刺激するカルチャー系トーク番組「月与志のカルチャー夜話」
2015年初秋の放送ですが、引き続きアーカイブの紹介です。
オールドスクール・アニメ第5回は、少年少女が夢中になった80年代の「青春アニメ」を特集しました。



2015年9月14日放送の第八十六夜は「青春アニメ」のお話し。
80年代、中高生の間で人気だった少年・少女マンガ誌からヒット作が続々とTVアニメ化。
人気のあったテーマ「恋愛」を軽快に描いた「ラブコメディ」が一つのジャンルを築きました。

元々は少女漫画で生まれた「ラブコメ」が、80年代少年マンガに波及。
従来の少年漫画的要素(スポーツ・SF・格闘など)と恋愛・ギャグが融合した、ライトタッチの作品が次々と生まれました。
そんな中、他のラブコメ作品と一線を画し「青春マンガ」というジャンルにまで高めたのが、あだち充先生の「タッチ」でした。
そして同時期、青年向けながら幅広い層に受け入れられた、高橋留美子先生の「めぞん一刻」が、金字塔。
少女マンガも、当時のトレンドや、少年マンガの影響を受けながら、名作が次々と誕生。

個人的に気になっていた少年ジャンプのお洒落ラブコメの流れ「DR.スランプ〜ストップ!! ひばりくん!〜夢戦士ウイングマン〜きまぐれオレンジ☆ロード」は、硬派が主流だった当時のジャンプに新しい流れを推進した編集者達によるものでした。
また「ぴえろ魔法少女シリーズ」は人気が高く、70年代・現代の魔法少女との比較も興味深いので、ひきつづき学習に努めます。
SEASON-5 第百十夜〜夢みる魔女っ子、第百十一夜〜夢みる魔法少女、第百十二夜〜闘う魔法少女などオールドスクールアニメDigシリーズ

視聴者より多数のコメント・情報を頂くようになり、当時の生の声を伝えるアーカイブとして機能してまいりました。ゴールの90年代へむけてひきつづき盛り上げていきたいと思います。


各コーナーの詳細は以下です。

きまぐれオレンジ☆ロードのヒロイン論争はあるある、という情報。
今期(2015)見てるアニメ:クラスルームクライシス・シャーロットとタイムリープ・シンフォギア・それが声優!

京アニ作品「境界の彼方」の感想:奈良が舞台のアニメ。奈良公園や奈良ホテルなどが登場。現代のラブコメ。作り込みのきめ細かさ。主題歌がすごくいい。
個人的に、笑いのツボがわからなかった。眼鏡萌え・妹萌え・突然アイドル・かわいいキャラ裁判など、ジェネレーションギャップを感じる。

ナゴヤが一番熱い日!世界コスプレサミット2015・ドキュメンタリーを見ました。

前回のふり返りと頂いた情報
月与志のカルチャー夜話 第八十五夜 〜SFアニメ:オールドスクール・アニメ04

新竹取物語 1000年女王は、メーテルの母・プロメシュームの物語・娘はメーテル、海賊エメラルダスとは姉妹。
メガゾーン23 時祭イヴは初音ミクの先祖か?機甲創世記モスピーダの主題歌はタケカワユキヒデ氏作曲。アニメロサマーライブの最後の合唱曲が銀河鉄道999。
アニメーター金田伊功氏のお仕事・通称「金田パース」・山本正之さんヤッターマンの歌と声優。

青春アニメ.png
<アニメ#12 オールドスクール・アニメ05:青春アニメ80's>

1)ラブコメディ
70年代後半にアニメが低年齢層向けから中高生向けに拡大。ラブコメディ要素を取り込んだ少女マンガ・少年マンガが続々とアニメ化。
ドタバタ喜劇的要素を伴った恋愛漫画=ラブコメ。元祖は「おくさまは18歳」(1969年)

ラブコメは少年マンガに拡大。「翔んだカップル」「ただいま授業中!」「さよなら三角」「750ライダー」「スクラップブック」など
アニメ化された少年マンガラブコメ「Theかぼちゃワイン」「さすがの猿飛」「ダッシュかっぺい」「まいっちんぐマチコ先生」「うる星やつら」そして「タッチ」


2)作品ごとの思い出
タッチ〜青春アニメの金字塔
あだち充先生・ラブコメ+野球+青春。「ナイン」「みゆき」「陽あたり良好!」など。
H2Oのテーマ曲「サマーホリディ」「想い出がいっぱい」が中学時代に大流行。少年サンデー。

めぞん一刻
女子大生作家ということで注目された高橋留美子先生・ビッグコミックスピリッツ・「うる星やつら」とも先生20代の作品。

ときめきトゥナイト
池野恋先生・原作人気がすごいね。唯一ちゃんと見ていた少女アニメ。ED「Super Love Lotion」がカッコ良かった。りぼん

おはよう!スパンク:わかめっ毛・なかよし

伊賀野カバ丸:焼きそば・別冊マーガレット・主題歌はシュガー。

少女アニメ「あこがれの男の子」の定番声優=水島裕さん・男子には「萌えよデブゴン」の声優さん

■愛してナイト:主題歌・主役声優は堀江美都子さん・やっこの恋占い・ささきいさおさんも登場?

はいからさんが通る大和和紀先生・大正ロマン・当時のサブカルチャーネタも盛り込まれたラブコメ歴史アニメ。

ストップ!! ひばりくん!(1983)
江口寿史先生・ラブコメのアンチテーゼ?でもひばりくんが美しすぎて人気・ED「コンガラ・コネクション」当時無名だった布袋寅泰氏がギター・少年ジャンプ。

少年ジャンプの「おしゃれなラブコメディーマンガ」路線・編集者 鳥嶋さん(ドクターマシリトのモデル)

夢戦士ウイングマン(1985)
桂正和先生・変身ヒーローとラブコメ・本格的な美少女ヒロイン・少年ジャンプ。

きまぐれオレンジ☆ロード(1987)
まつもと泉先生・ヒロイン鮎川まどかが大人気・三角関係・超能力・ポップ&ライト・絵がとってもお洒落!・少年ジャンプ。
スタジオぴえろ作品。企画:布川ゆうじ氏(スタジオぴえろ創始者・グロッキー、ボヤッキーなどのモデル)キャラクターデザインは高田明美さん

視聴者さんのコメントで膨らんだ話題・少年ジャンプとぴえろ魔法少女シリーズ

ぴえろ魔法少女シリーズについてはオールドスクールアニメDigシリーズで深めました。
SEASON-5 第百十夜〜夢みる魔女っ子、第百十一夜〜夢みる魔法少女

次回は80年代のゴールデンタイムを席巻した問答無用のビックネーム達を取り上げます。アニメが多様化した黎明期のOVA(オリジナルビデオアニメーション)のお話も。
第八十七夜 〜80's黄金アニメとOVA:オールドスクール・アニメ06 へつづく


第七十七夜 〜懐かしのテレビまんが:オールドスクール・アニメ01(詳細記事)
第1回は「テレビまんが」と呼ばれていた1960〜70年代のお話。一緒に懐かしみましょう☆平成世代も歓迎。
劇場アニメーションからテレビまんがへ。日本のアニメの歴史を辿りながら、思い出話なども。

第七十八夜 〜テレビまんが黄金時代:オールドスクール・アニメ02(詳細記事)
思いがけず大賑わい「オールドスクール・アニメ」第2回は「海の日」配信でした。
テレビまんがが輝いていた黄金時代・70年代をもう一度深めます。

第七十九夜 〜テレビまんがと昭和:オールドスクール・アニメ03(詳細記事)
大人が子どもに戻る一時「オールドスクール・アニメ」第3回も引き続き70年代。
テレビまんがを通して昭和という時代をふり返ります。

第八十五夜 〜SFアニメ:オールドスクール・アニメ04
第4回はテレビまんがから「アニメ」へ。SFアニメブームと中高大生のアニメファンが登場した70〜80年代。
ヤマト・ガンダム・マクロス・ナウシカから王立宇宙軍まで…。

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2017年02月20日

月与志のカルチャー夜話 第八十五夜 〜SFアニメ:オールドスクール・アニメ04

月与志がお送りする、知的好奇心を刺激するカルチャー系トーク番組「月与志のカルチャー夜話」

長らくblogでの紹介が出来ておりませんでしたが、再開いたします。
※本放送およびアーカイブの編集アップ作業が膨大だったため・ようやくシーズン5が上がりました。
こちらは2015年初秋の放送ですが、また少しず紹介していきたいと思います。


【月与志のカルチャー夜話 第八十五夜 〜SFアニメ:オールドスクール・アニメ04】


2015年9月14日放送 第八十五夜は、オールドスクール・アニメシリーズの四夜目。
三回にわたって特集した「テレビまんが」の時代から歩を進め、SFアニメブームと中高大生のアニメファンが登場した70〜80年代のお話。
今(2017年)では番組の名物企画となりましたオールドスクール・アニメの始まり回。
後にで深く掘り下げる事になる、ガンダムや冨野監督作品と80年代リアルロボットについて、先鞭を付けた回となっております。
SEASON-5 第百八夜〜機動戦士ガンダム、第百九夜〜80'sリアルロボットなどオールドスクールアニメDigシリーズ

60年代より、本格的な日本SFが立ち上がり、日本万国博覧会が開催された1970年代には科学全般に対する世間の関心が高まった。1970年代後半には、映画『スター・ウォーズ』の日本公開でSFブームの到来。
そんな中、本格的なSFアニメ『宇宙戦艦ヤマト』がブレイクし、中高大生のアニメファンを獲得。劇場映画が公開されると社会現象とも言える一大ブームを巻き起こす。その後の『銀河鉄道999』『機動戦士ガンダム』『超時空要塞マクロス』『新世紀エヴァンゲリオン』に至るアニメブームの先駆けとなった。

年表を追うと、1970年代後半は、アニメイベント・ラジオドラマ、アニメ専門誌の創刊、公式アニメファンクラブの創設、コミケの始まりなど、アニメが若者文化として成長していくステップを踏んだことが分かりました。『宇宙戦艦ヤマト』の成功で、80年代には多数の劇場版アニメーションが制作され注目されました。

現在も人気が高い『機動戦士ガンダム』と「リアルロボット」シリーズ。
『超時空要塞マクロス』スタジオぬえによる詳細なSF設定と、ラブコメ、アイドル要素を取り入れた意欲作。
風の谷のナウシカ』現代まで最も知られ受け継がれている日本SFアニメの金字塔。
クラッシャージョウ幻魔大戦王立宇宙軍 オネアミスの翼まで。
社会的な背景と、個人的な感想も交え、お話いたしました。


各コーナーの詳細は以下です。

・義経静弁慶サミットに参加しましたというお話し
・前回のふり返り〜ピンクレディー・山本リンダさん・小川ローザさんについて
月与志のカルチャー夜話 第八十四夜 〜日本のギャル

・今見てるアニメ〜クラスルームクライシス・シャーロット・シンフォギア

SFアニメ.png

<カルチャートーク:アニメ#11 オールドスクール・アニメ04:SFアニメ>
1)日本のSFの歴史
戦後日本に流入した「空想科学小説」
・60年代:早川書房S-Fマガジン、第1回日本SF大会/小松左京、筒井康隆、星新一
・70年代:SFマンガ、SF特撮・日本万国博覧会、映画『スター・ウォーズ』と宇宙戦艦ヤマト
・80年代:機動戦士ガンダム、超時空要塞マクロス、風の谷のナウシカ

2)アニメの歴史:1960〜70年代

こども向けのてれび漫画から、中高大生にアニメファン層が広がる時代。アオイホノオの時代。
海のトリトン〜宇宙戦艦ヤマト〜タイムボカン〜超電磁ロボ コン・バトラーV・未来少年コナンなど。
宇宙戦艦ヤマトの大ヒットと初めてのメディアミックス(映画・レコード・小説・漫画、ラジオドラマ・キャラクター商品など)展開。
アニメファンクラブ設立、声優養成学校誕生、アニメ専門誌創刊

3)思い出のSFアニメのお話し
■宇宙戦艦ヤマト:アニメブームの先駆けとして日本のアニメシーンを変えた存在だったようです。
■機動戦士ガンダム:リアルロボットものを拓いた名作。富野由悠季監督について。長浜ロマンロボシリーズ。劇場映画を観に行った思い出。ガンプラ。
■超時空要塞マクロス:ロボット、SF、ラブコメディ、アイドルなど当時のティーンズが好きな物全盛りという斬新な作品だった。
1983年は劇場SFアニメの当たり年!クラッシャージョウ・幻魔大戦・宇宙戦艦ヤマト 完結編。
■風の谷のナウシカ:安田成美さんの主題歌
■王立宇宙軍 オネアミスの翼:リアルなメカ描写とリアルな青春ストーリーが印象的。坂本龍一氏がアニメーションの音楽監督。ガイナックス制作・制作スタッフの多くが商業作品の制作経験をほとんど持たない20代の若者だったとか。

次回は少年少女が夢中になった80年代の「青春アニメ」タッチ、みゆき、ときめきトゥナイトからきまぐれオレンジロードまで。
第八十六夜 〜青春アニメ80's:オールドスクール・アニメ05 へつづく

第七十七夜 〜懐かしのテレビまんが:オールドスクール・アニメ01(詳細記事)
第1回は「テレビまんが」と呼ばれていた1960〜70年代のお話。一緒に懐かしみましょう☆平成世代も歓迎。
劇場アニメーションからテレビまんがへ。日本のアニメの歴史を辿りながら、思い出話なども。

第七十八夜 〜テレビまんが黄金時代:オールドスクール・アニメ02(詳細記事)
思いがけず大賑わい「オールドスクール・アニメ」第2回は「海の日」配信でした。
テレビまんがが輝いていた黄金時代・70年代をもう一度深めます。

第七十九夜 〜テレビまんがと昭和:オールドスクール・アニメ03(詳細記事)
大人が子どもに戻る一時「オールドスクール・アニメ」第3回も引き続き70年代。
テレビまんがを通して昭和という時代をふり返ります。


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2017年02月04日

感想:わだばゴッホになる〜世界の棟方志功

2016年末にあべのハルカス美術館で開催された展覧会「わだばゴッホになる〜世界の棟方志功」の感想です。
※いままで展覧会報告の記事は、タイトルにレポート(rp)と名付けておりましたが、ただの感想文でしたので、今後は感想:と付けることにします。

棟方志功といえば、力強くも魅力的な版画板画)で知られた世界的巨匠で、私も彼の作品にはとても心惹かれます。今回は初期から晩年までの有名な代表作を、巨大な板壁画も含めて一堂に見る事ができました。

今までの棟方志功(1903〜1975)のイメージは、映像に残された一心不乱に版木を彫る姿や、情熱的な言葉などからして、素朴で個性的で激情的な芸術家、インスピレーションで魂に響く普遍的な作品を生み出せる異能の人、といった感じでした。

しかし初期作品からの変遷を見ていると、むしろ視覚表現に関して高度な技術をもったテクニシャンであり、荒々しく見えるけど実は繊細な感性に裏打ちされた表現なのかな、という目から鱗な発見がありました。

女人観世音菩薩.jpg
※志功の版画をカバーしてみました(模写)

そして志功の描く女達、プリミティブで豊満で生命力(エロス)に溢れたそのイメージは、明るく生きる喜びに溢れているようです。
その一方で、モノクロで、暗く陰鬱な、ぞっとするような作品もあり、その二面性が興味深かったです。
詳しくお話しいたしましょう。

「わだばゴッホになる」大正13年に21歳で上京した青森の青年は、版画家として成功し、世界のムナカタと呼ばれました。生涯かけて無我夢中に制作した木版画の数々や、彩色の美しい肉筆画は生命力にあふれ、現代の我々の眼にも、常に斬新に映ります。習作期から晩年までの代表作を網羅し、強烈な個性を発して輝き続けた偉大な版画家の生涯をたどります。
公式サイトより

■初期作品〜モノクロの美
青森で生まれ育った棟方志功氏は、少年時代にゴッホの絵画に出会い感動し、画家を志し上京したといいます。
油絵の風景画などはわりと普通ですが、驚いたのは西洋趣味満載の淑女が登場する「木版画集 星座の花嫁」という初期作品。当時の乙女が喜びそうな大正ロマン感があり最も意外でしたが(完成度も高いし)大正時代の版画家、川上澄生の影響だったといいます。

それで木版画に転向するそうですが、そこからが凄い。絵がどんどん抽象化、単純化していき、平面的で明確で力強くなっていきます。しまいには限られた四角の紙面に、豊かな自然世界が展開されはじめ、白と黒でここまで表現できるものか!としばし呆然といたしました。

その成果が「大和し美し」詩と画がモノクロの紙面で融合した魅力的な版画で、国画展に出品したところ前衛的すぎたのか受付拒否騒ぎになり、それを「民芸運動」の人々に救われ、柳宗悦や河井寛次郎との交流がはじまったとか。


■さまざまな影響
素朴な美を提唱する「民芸運動」の関わりや、その付き合いの中で仏教の世界観に触れたりと、関わり合った人達から様々な影響をうけて、棟方志功の個性と作風は作られていったようです。

初期の代表作「釈迦十大弟子」(昭和14年)を拝見しましたが、力強くデフォルメされた人物像を際だたせるのは、荒々しい彫り跡と、刷りの掠れやムラ、わずかな滲み、さらに刷る時にできたのか紙のシワまであり、それらノイズともいうようなものが版画の魅力を引き立てているように思えました。
よく書画作品は裏打ち額装されてキレイに展示されるものですが、ここでは刷り上げたそのままがぺらっと展示されており、いっちゃなんですがゼロックスコピーやFAXの感熱紙のようなざらっとした肌合い。でもこれがまたイイんです!まるでエレクトロニカの音響系ノイズ…以下略

初期作品を見たお陰で、棟方志功は絵画技術に長けていたことが分かります。ということはこの素朴で簡素で一見荒々しく粗雑な仕事に見える手法は、めざす画のための演出だったのではないか、と気がつきました。刷りあがった画はまるで円空の暖かな木彫りの仏像のようです。

棟方志功は自分の版画を「板画」と呼んだ、板の性質を大事にあつかう、木の魂をじかに生み出す、といった思いからだそうです。
版画に転向したのは、視力というハンディと、ゴッホが感銘を受けたという浮世絵版画をやろうという事だったそうですが、そもそもゴッホに倣って我流を通し、西洋画の弟子にならない日本独自の表現をと考えて、見いだしたのが「板画」だったようです。
師匠に就かず、自分の周りの人々から様々な影響を受けて、独自の道を歩んだことが、後の世界的な評価に繋がったのかもしれませんね。


■書と画の同一
棟方志功の作品には文字が取り入れられているものが多く、書き文字もまた魅力的で絵と雰囲気がぴったり。
詩や歌が詠む世界を表現している連作などはぴったりはまっていて(同じく東北の宮沢賢治「雨ニモマケズ」などわかりやすかったのですが)良い書画です。書と画の同一は会津八一に出会ったためとも。
よくみると、改行や文字の扱いも巧みで、ほんとパブリックイメージと違って志功さん技巧派だったのね、と。(勢いだけで雑に描いて迫力う!と思っていた自分を猛烈に反省しました)

雨にも負けず.jpg
※志功の版画をカバーしてみました(模写)なぜかいつも詩の一文を忘れて彫っちゃうのだそうです。

■倭画(やまとが)
棟方志功といえば、ふくよかで色っぽくて、どこか観音様を思わせる、やさしくて頼りになりそうな女性像も有名ですね。
このような女性に憧れを抱いていたのだろうと思わせてくれますが、説明によると早逝した母の面影や愛する妻のイメージがあるようです。きっと志功少年を慈しんだ母だったのでしょう、女性への憧憬がまっすぐに形になって、普遍的な母性像として現れていますね。
(志功が愛唱していたという岡本かの子の詩「女人ぼさつ」を書きこんだ「女人観世音板画巻」など)
ゴッホに憧れたという志功ですが、むしろピカソの女性像とシンクロするものを感じます。

女人観世音菩薩.jpg

板画の裏から彩色するという技法が登場してから、女者シリーズ?は俄然色っぽく魅力的になってきました。木を彫刻したハードエッジの墨線と、極彩色の滲みという取り合わせが非常に良かったのだろうと思います。(墨絵の彩色画よりずっと魅力的)
棟方の郷土、青森のねぶた祭りの鮮やかさとも繋がってますね。


■神話世界
展覧会を進んでいくと、この女性像が、民話や神話的なイメージと相まって描かれ、縄文時代とか原始の生命力の象徴とでもいうような存在になってまいります。
国際的な評価を高めた後年は、テーマも版画そのものもスケールが大きくなってまいります。
大迫力だった大板壁画(だいはんへきが)「大世界の柵<坤>人類より神々へ」志功が大好きだったベートーベンのモチーフなのだそうですが、もはや神話世界に飛翔しており…ただ唖然と眺めました。

そして万博のために制作したという「大世界の柵<乾>神々より人類へ」となると、さらに芸術世界が進化し、今までの作品世界からも離れ…生命賛歌といった喜びとも違う…さすがの私も理解がついていけませんでした。まるでメロディー、調性、リズムをも放棄して実験的に進化していく電子音響のように、いったい何処を聞けばいいのかと途方に暮れる感じ(はい、わけ分かりませんねw)
いったいこれはどう評価されているのか、知りたいところです。


■東北の板画

晩年は故郷をテーマにした板画が多く、円熟期らしく素晴らしい作品群でした。
これも有名な「飛神の柵(御志羅の柵)」は、青森など東北に伝わる悲恋の民話をテーマとしているそうですが、他にも時々ぞっとするような怖ろしい感じの作品があったりします。
説明によりますと「幸薄い土地に暮らす人々の心の闇と、それ故の幸せへの祈願」志功は故郷に伝わる過酷な物語を歌った民謡が好きで口ずさんで制作していたとも。
正と負の情念が混在する故郷を志功は愛しており、作品の主題としていたのでしょうか。
カラフルで明るい生命力溢れる作品と、モノクロで陰鬱なタナトスを感じる作品、どちらも志功の世界なのでしょう。

というわけで、一念彫り続けて世界に届いた芸術の奥深さを感じてまいりました。
私のようなうすーいぺらぺらの感性ではまったく追いつけませんでしたが、憧れとして志功さんを心に持っていたいと思います。

※会期終了してます。なかなか長文blogを書くことができず遅くなりました。
※blogを書いた時期に電子音楽熱が再燃しておりまして、所々おかしなこと言ってますがご勘弁
→月与志のカルチャー夜話 第125夜 エレクトロニカ〜エレクトロニックミュージック-4(未)

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