2019年01月15日

墨絵de亥年〜猪と猪八戒と水仙

平成三十一年もあけました。おくればせながら亥年の墨絵です。

亥年.jpg

【亥】
普段なかなかお目にかかる事の無い、描くのちと難しかったなぁ。
小さい子供猪にはシマウリ(縞瓜)に似た模様が現れることから「うり坊」と呼ばれているとか(大人になったら消える)そして、牙のあるのは雄です。

日本では古来より身近な食肉として鹿とともに重宝された。猪肉を「ぼたん」といいますが、獣肉食が禁忌だった時代についた隠語だとか(馬肉=さくら、鹿肉=もみじ、鶏肉=かしわ、など)
現代では農作物被害による狩猟、ジビエなどで話を聞くところ。

猪というと「猪突猛進」という言葉がありますね。
がむしゃらな勢い!みないなものしばらく忘れているな、と描きながら思った次第。とりもどさないとね。

ところで、なぜ年に動物をあてはめているのだろうと調べてみたところ、古代中国で時間や方角を表す記号として十二支が生まれ、それぞれの記号に動物名が割り当てられていたのだとか。だから数字と動物に深い意味はない、漢字(亥と猪)にも関連はないそうですよ。

しかしながら意味の無いものに意味を見いだしたがるのは人の常でしょうか。○年生まれの人は性格がうんたら的な話は万国共通のようで、海の向こうの国では、干支によって出生率まで変わる程(人気の干支に子供を産みたい等)

そうそう、本家中国では今年の干支は「豚」なのだそうですよ。
我々からすると意外でびっくりなのですが、むしろあちらが本家、日本の「猪」の方が例外のようです。

猪を家畜化したものが豚。日本では養豚が定着しなかったため、十二支では身近な動物「猪」に置き換えたらしい。そして、中国では「猪」は豚を意味する漢字なのだそうです。

そういえば!猪八戒って豚さんでしたね、確かに。


猪八戒.jpg

【天蓬元帥 猪八戒】
というわけで、今年の干支もう一枚は「猪八戒(ちょはっかい)

西遊記で日本でもおなじみ。江戸時代に紹介されて以降、現代まで繰り返し語り継がれているエンタメの古典ですね。
私的にはやはり西田敏行さん演じた猪八戒のイメージですが(若い世代は悟空と言えばD.B.ですかね?)
中国でも人間臭い(人の欲望に正直な)猪八戒は人気だそうです。

元々は天界で天蓬元帥(てんぽうげんすい)という官職にいたのだけれど、欲に溺れて追放→豚に転生→悪事を働く日々→三蔵一行と出会い改心、仏教を求める旅を助けるイマココ→お釈迦様に将来浄化を約束される・供物の残りを好きなだけ食べられる役職だってうっほ!
…なるほど憎めないキャラですね(´ω`)

むつこいのが続きましたのでw最後は爽やかに、水仙の花など。年の暮れあたりから一斉に花が咲いてきました。

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【清楚な冬の花〜水仙】
雪中花、または早春の花とも。花形、葉形とも個性があって描きやすいですね。
中国では仙人を意味する花。寒中に白く咲き芳香を漂わせる事などから、清浄高雅な花として愛され画に描かれたとか。
なんとなく和花のイメージでしたが、シルクロードを経由して渡来。万葉集には登場しない。
原産は地中海沿岸で、ギリシア神話ナルキッソス(ナルシストの由来)に登場する花でした。

「白鳥が 生みたるものの ここちして 朝夕めづる 水仙の花」〜与謝野晶子
でも本当に水仙は派手すぎず清らかで絵になるわぁ、キラやば〜っ☆

というわけで、今年は少し一歩前に出られるよう、猪突猛進を忘れず、がんばります。


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2019年01月04日

2019年 年頭所感〜あらたしき年の始めの

2019年明けました。 皆様のご多幸と益々のご発展を祈念申し上げます。

昨年は災害の印象が強く、私も辛い思いで過ごした時がありました。
そして平成が終わり、新しい年号へ。
世の中も、そして私自身にも、新らしい季節が巡って参りますよう。

そんな気分を象徴するかのような見事な元旦の晴天、日の出の強い輝きがとても神々しく見えました。
この印象を以て、をテーマにした作品を新年に描いてみたいと思います。


月与志未_椿.jpg

さて、こちらは雪中椿
寒い季節に咲く鮮やかな椿の美しさといったら。
雪降り積もる中では尚一層ですね。

「新しき 年の始の 初春の 今日降る雪の いや重け吉事」大伴家持〜万葉集
「万葉集」最終奥義にして、新年を寿(ことほ)ぐ超定番ソングを書き添えました。

お年賀だったのですが華やぐよりはやや詫びた雰囲気でおおくりしました(好みでつ)
ところで、新しき…は、どうやら「あらたしき」とよむようですね、いやぁまいったまいった。

※古語「あらたし」が音変化して「あたらし」となり「あたらしい」になったとか。言葉はいきもの。ら抜き言葉も近い将来スタンダードになるんでしょうなぁ。


<2018年をふり返る4枚>

181224_つばき.jpg

「巨勢山の つらつら椿 つらつらに 見つつ偲はな 巨勢の春野を」坂門人足〜万葉集
和歌の世界ではどうやら有名なフレーズ「つらつら椿
巨匠の名句を引用して新しい歌を作る「本歌取り」だったとか。いまのPOPSと同じ事してたんだねぇ。

賑やかに沢山咲くさざんかと違い、椿は一輪に重みがある、という印象を持ちました。
椿についてはまた改めまして。


2018年 年頭所感をふり返りました所、己が未熟な画力を、多少でも向上させるのが目標でしたが、それは多少なりとも進歩したようです。
一度古典にどっぷりつかってみたいとも書いておりまして、それは益々継続中です。
水墨画から始まって、最近はやまと絵、和歌の雅な世界にハマリそう。

感想:物語とうたにあそぶ at中之島香雪美術館〜市中の山居に憩う

それらは、作品にも反映されています。ぎゅーんと言魂がしゃうとするのです!

墨絵アートてぬぐい〜龍田川紅葉


そもそもは、日本美術の定番、というか、やまと絵で描き継がれてきた古の花々を描きたいと思ったところ、「花」そのものをまるで知らなかったという反省から写生を始めたら、花の世界の深さ、そして自然はなんて美しいんだろうという発見がありまして。

おでかけスケッチ〜秋の草花

花を写生させてもらっていた萬葉植物園には、万葉集で詠まれた和歌が添えられておりまして、それを書き添えていたところ、和歌の面白さ、かな書の魅力に目覚め、じんわりドハマリ中です。

そんな訳で2018年秋には、墨絵アートてぬぐいの作風も大きく変わりました。

墨絵アートてぬぐい〜紅葉に鹿


金龍俯瞰.jpg

定番の竜虎図も、より進化いたしました。

墨絵アートてぬぐい〜龍虎図・黄金の風

この変化が、この数年地道に描き続けた成果だと自負する所です。


ところでこれら古典から学ぶシリーズとは別に、ファッションテーマのイラストも(密かに)長く続けておりまして。
昨年は人体を正確に描けるよう熱心に頑張りました。

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特にファッションは、頭身やプロポーションのバランス、ポージングがとても重要なことを理解しました。
さらには、服とボディのバランス、着こなしや雰囲気でトレンド感が演出できる、とか、プロのモデルさんは凄いですよねー。


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文化服装学院×奈良県 FASHION SHOW「あたらよ」
こちらはより自由にイメージを遊ばせて気楽に描いていたシリーズなのですが。
昨年の文化服装学院さまの学内展示に、私のイラストレーションも参加させて頂いていただくという、ぶっとび!ミラクルな事も起きました。

FASHION SHOW「あたらよ」イラストレーション展示のお知らせ

こうやって書くと、地味ながらも少しは成長があったのだな、と思い起こせます。
かつて駆け出しの頃は派手にやっていたつもりでなんだかめまぐるしく右往左往しておりましたが、描く絵もこころもなんだか浮ついていたような。
一日一歩、三日で三歩(で二歩下がる)でもいいから、今年も少しずつ積み重ねていきたいと思います。
やっぱ→いつもDO MY BEST! それしかないんです。

2019年は今までよりもっと自然に目を向けて、美しい世界を讃えるような絵が描けるようになれたらいいな。
それと、こんな私の絵でも良いとご依頼がいくつか来ておりますので、お仕事も頑張りますよ。

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2018年12月27日

感想:物語とうたにあそぶ at中之島香雪美術館〜市中の山居に憩う

師走の多忙の合間を縫って、大阪中之島の高層ビルの中にある、中之島香雪美術館を訪れました。
開館記念展part5「物語とうたにあそぶやまと絵和歌の優美な調和を感じてまいりました。

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普段は五重塔より高い建物のない奈良に居るので、都会に出てくるとなんだか居心地悪いのですがw
フェスティバルタワーという当世最新の塔に登ったら、そこには思いがけなく詫びた茶室が…。

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2018年三月にオープンした新しい美術館だけに、美しく上品な空間という印象。
超高透過ガラスと、暗めの照明設定で作品鑑賞に浸れるという狙いがあるのでしょう、歌と物語の世界をたっぷり堪能いたしました。

中之島香雪美術館 開館記念展「 珠玉の村山コレクション 〜愛し、守り、伝えた〜 」V 物語とうたにあそぶ


展示は絵巻と書跡が中心で、やまと絵と和歌の優れた作品が続々と。
この最近興味が高まっているジャンルでもう私的にドストライク!!

ぎゅーんと言魂がしゃうとするのです!
墨絵アートてぬぐい〜龍田川紅葉 


【フリースタイル和様書の世界】

まず最初に遭遇するのは藤原定家(小倉百人一首の撰者)の名高き小倉色紙
正方形に近い色紙にほぼ両端揃え、ひらがな等間隔、太め強めな印象の書風(定家様〜ていかよう)は、鎌倉武家の時代の書ということです。

やはり好きなのはズバリ平安朝のかなの雅
高野切れ(古今和歌集最古の写本・秀吉さんが高野山に伝えた事から)の(伝)紀貫之や、三跡 小野道風の、針金のようにシャープで柔らかい書跡にゾクゾク。

歌の作者の肖像と和歌を組み合わせた「歌仙図」がさらに面白い(江戸期以降は小倉百人一首のカルタなどでお馴染み)
漢字・仮名・変体仮名を自在に組み合わせて、濃淡や大小、疎密、行間の変化を立体的に考えてほぼ即興で書くという…
それがさらに人物絵と呼応するとかほぼレイアウトデザインの世界ですわ。

いわゆる散らし書きという感覚は日本独特の美で、本家中国の書ではまずありえないんだとか(そもそも仮名がない)
それにしても、この自由気ままな改行、配置、変形(かなを曲げたり伸ばしたり)とか…中世の宮廷人フリースタイル具合がはんパナいの!

最近変体仮名(へんたいがな)を少し解するようになりまして、すると暗号にしか見えなかった仮名がしっくり来るようになりまして…
そうなると逆に、平仮名(ひらがな)だけで書いたものはちょっと普通というか、物足りなくなってきたんです。
やっぱりここぞという所にヘンタイを配するとキマるんですよね、以前は読めない仮名は敷居が高い、なんだかいけ好かない、お高くとまりやがって!って思ってたんですがねw
私も立派なヘンタイ紳士に足を踏み入れつつあるのでしょうか。

書のグラフィックな魅力だけではなく、歌そのものも味わい深く面白く、それが絵や書風と響き合うところが、やまと絵&やまと歌が共に在ったという意義なのでしょう。
やまと絵が伝統的に記号的(非写実)なのは、歌や物語との関わりが深かったからではないかと思いました。

歌というのは考えてみると象徴的で記号的な言葉の表現ですからねぇ。
和歌の世界で紅葉といえば竜田川、桜といえば吉野山、山吹といえばぶっきー(フレプリ)ぢゃなかった井手の玉川。
そんな共通認識を利用して、工芸品などの意匠で読み解き遊びを盛り込んだり…源氏物語の表紙の装丁は豪華で美しかったなぁ。

和歌が書かれなかった空白が未完成感のある歌仙図は、珍しい写実的な肖像…と思ったら(伝)円山応挙筆でした。

そういえば、歌仙図といえば讃岐の国の金刀比羅さん、あそこには円山応挙・伊藤若冲もあったなぁとふと思い出した。
香川アートスポット〜金刀比羅宮


【めくるめく絵巻物の世界】

流麗なかな書に静かに興奮しておりましたが、やまと絵もまた素敵でした。定番の源氏物語はいわずもなが。

ずっとみたかった岩佐又兵衛の肉筆画を拝見。保存状態が良いのか、金銀の本来の効果が保たれていてデモーッルト良い!
特に、精密に描かれた武人達の輪郭線が金で輝いてる。やまと絵独特の濃彩色と、金泥の霞の輝きが、本来はキラキラこのように調和しているのかとわかる逸品でした。キラやば〜っ☆

江戸初期の絵師、岩佐又兵衛は人々の喜怒哀楽を描くことで浮世絵の祖とされる(と、へうげもので読んだ)
描いた堀江物語絵巻は武人の仇討ちの物語、侍は元々は貴族に雇われていた私兵で荒事の当事者だったとか、そんな事を思い出させるやや荒ぶる武人像でした。
そんな侍層の中にも黄金の志を抱いた若者がいた、この源頼朝には正しいと信じる夢がある!平家のボスを倒しサムライスターに…略)

浦島物語絵巻、漁師なのにまるで貴族のような生活で描かれているの笑ったw auも驚く荒唐無稽。

池田孤村が描く平安歌人 赤染衛門は美人さんでした。美しい和歌を詠むというだけでときめくという平安貴族の妄想、分かる気がしてきたw
コレクションは中近世のやまと絵が多いそうなのですが、古美術的な価値はともかく、劣化の少ない美しい絵は鑑賞にはよいと思う。

紅葉の小袖がおしゃんてぃーな立ち美人図、「竜田越え」の意が込められているという。
後ほど、伊勢物語の段で詳しい話を知りました。筒井筒で結ばれた夫婦のお話し。

「風吹けばおきつ白波たつた山 夜半にや君がひとりこゆらん」
浮気に出かける旦那の道中を、健気な妻が身を案じて詠んだ歌、そんな物語がこの絵に描かれた女性には含まれていた、奥深いものですねぇ。

伊勢物語のやまと絵、人物はかわいくデフォルメ、でも描写は意外に精密…それって萌絵と同じやん!日本の中世絵画って未熟だから描写が拙いのだと思ってたけど、そうじゃなくあくまでkawaiiのが好きな民族性だったんだねぇw

おっと、有名な絵師の作品もありました。
江戸淋派の祖 酒井抱一の短冊。なんともやわらかくグラフィカルでさすがの優美さでした。
そして葛飾北斎肉筆画帳。まるでグラビア印刷のようなクオリティでほんとに肉筆画なの!?これぞ神業ですねぇ。

感想:葛飾北斎〜富士を超えてatあべのハルカス美術館

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【中之島香雪美術館】

そんなわけで、有名所も押さえている優品コレクションが、開館記念割引き(ポスカをどこかでゲットした)で800円で楽しめるとかもう十分すぎました。(このジャンルに興味があれば、でしょうけども…)
大阪の新しい美術館、おすすめです。2019年春は鳥獣戯画の特別公開もあるそうですよ(明恵のみた夢の展覧会)

京都博物館で拝見したときの記事
墨絵の金字塔、鳥獣人物戯画を拝見してきました

コレクションにはフーテンの梁さん(梁風子=梁楷)の「布袋図」もあるそうです(東山御物・重文)お土産のパッケージになってたw
感想:国宝展 at 京都国立博物館〜等伯×永徳・牧谿×梁楷 水墨画オールスター祭りだよ!


香雪美術館は、朝日新聞社の創業者、村山龍平(号:香雪)氏が収集された美術品を展示する施設ということで、コレクションはこれらの他に、数寄者らしい刀剣などの武具・茶器・書跡・仏教美術が中心。
朝日新聞って大阪だったんですねぇ。フェスティバルホール、甲子園の全国高校野球、東洋古美術誌「國華」の支援など、様々な文化的後援もされているとか。

館内にはお茶室がまるっと再現、古田織部の茶室「燕庵」の写しだそうです(藪内流燕庵→玄庵→中之島玄庵イマココ)
「燕庵」(えんなん)というと、客人のお供(ご家来衆)の相伴席を設けたという事で、戦国の世で利休居士が主客の立場や身分の差を超えた密接な場として発展させた茶室を、古織殿が新たな江戸の武家社会にあわせて変えたとか師の意志を曲げたとか(と、へうげもので読んだ)いわれてたアレですね。

戦国の世に発達した茶室は、戦の合間にほっと心を和ませる空間として多忙でストレスフルな大名武将達に必要とされたのだろう…と、再現された茶室を眺め思いを馳せつつ、大阪ビジネス街ど真ん中のこの美術館はまさに市中の山居でした。

日本美術の優美な世界に浸ったら、さぁ年末の追い込みにいざゆかん!
(と、いいつつこんな長文書いてしまったオレ乙)

玄庵.JPG
中之島玄庵
追記2019年2月
二回目の「物語とうたにあそぶ」へ。岩佐又兵衛の絵巻や北斎肉筆画帳の別画を拝見。でもそれ以上にかなの達人の優雅な書跡を眺めるのがディ・モールト心地よい!

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