2020年01月14日

墨絵de子年〜女鼠小僧〜こいつぁ春から縁起がいいわぇ

令和二年もあけました。おくればせながら子年墨絵です。

女鼠小僧.jpg

【をんな鼠小僧〜こいつぁ春から縁起がいいわぇ】

令和貳年 子年の描き初めです。
ゆったりにじむ墨線をお楽しみください。


2019年の亥があんまりな出来だったので…今年は方向転換しました(´ω`)
猪八戒に引き続き、鼠の擬人化キャラでございます。

墨絵de亥年〜猪と猪八戒と水仙


時代劇などでおなじみの「鼠小僧
弱きを助け強きを挫く義賊のイメージですが。

調べてみますと、モデルとなった鼠小僧次郎吉は江戸時代に実在したそうで、大名武家屋敷を荒らした窃盗犯。
義賊伝承はあったものの、実際は賭博で身を持ち崩した盗人ではないかということです。

一方「金に困った貧しい者に、汚職大名や悪徳商家から盗んだ金銭を分け与えた」という伝説から、庶民のヒーローとして語り継がれ、ほどなく歌舞伎にも登場。
石川五右衛門白波五人男もそうですが、盗人悪党でも、その強い存在感で人気者になるのも昔からある事なのですね。
罪人の市中引き回しは当時一種の見世物だった…有名人の鼠小僧を一目見ようと野次馬が大挙して押し寄せた、とありました。死刑制度廃止が時流の現代からするとなんとも野蛮な気がするのですが、人の成す事は今昔あまり変わらないのかも。

明治以降は時代小説、時代劇、映画で、鼠小僧次郎吉は人気の題材となったようです。
そして昭和のTVドラマでは「女ねずみ」が登場。
見た事はないのですが、不二子ちゃんみたいな感じ?

今回は、萌カワねずみに、ねこ耳岡っ引で、新しい令和の鼠小僧のイメージを描く心意気だったのですが、そこはかとなく漂う昭和感はご愛嬌(´ω`)

因に…書き添えた「こいつぁ春から縁起がいいわぇ」はよく聞く決まり文句。
粋な言い回しのおめでたい言葉とおもいきや…盗人がぬれ手に粟で大金せしめたって喜ぶ歌舞伎の台詞でした。

というわけで、新年早々ろくでもない絵を描いてしまいましたとさw



描き初めでは、余興という事で、こういうのも書いております。

イース様.jpg

生死去来 棚頭傀儡 一線断時 落々磊磊
映画「イノセンス(2004年/押井 守監督)でとても印象的だった箴言、

生死の去来するは 棚頭の傀儡たり 一線断ゆる時 落落磊磊
(せいしのきょらいするは ほうとうのかいらいたり いっせんたゆるとき らくらくらいらい)

これは生死に輪廻する人間の有様をたとへなり。棚の上の作り物の傀儡、いろいろに見ゆれども真には動くものにあらず。操りたる糸のわざなり。この糸切れん時は落ち崩れなんとの心なり。〜花鏡

出典は世阿弥の能楽論「花鏡」で、原本は月菴宗光という室町時代の僧の偈文だそうです。


【書の歴史】
昨年は書の歴史を学びましたが、これまた深くて濃い世界です。
日本の古典絵に、なにげなく添えられている書がとても味わい深くて好きなので、今回の墨絵にも書き添えているのですが。

いわゆる「和様書」にも時代により様々なモードがあるのです。
平安時代に一世風靡した王朝風仮名(いわゆる古筆)ばかりが和様書ではなかった。
完成された「上代様」そこから派生した「定家様」、天皇家の書「宸翰様

室町期には水墨画と共に入ってきた禅僧の「墨跡」。
室町・安土桃山は、武家、文化人、僧、町人の自由な書が発展。
江戸期の公用書体は、青蓮院から受け継がれた「御家流」。

さらに時代の節目で中国書のモード(古代の唐様、江戸の漢学の書、明治以降の六朝風など)が流行したり。

日本の「書」のルーツは弘法大師空海だそうですが、その源流は中国の書聖王羲之」楷・草・行書の成立に関わった巨星です。
あの「令和」の典拠になったという万葉集 梅花の宴のモトネタとされる「蘭亭序」は王羲之の代表作だとか。

墨絵アートてぬぐい〜令和をお迎えする・梅桃桜

中国の書は、和様書とはやはり違うのだけれど、石碑拓本など眼で追うだけでもなんだか魅力的。
書にドハマりする人物が歴史上後をたたないのがなんとなく分かる気がする…危ないあぶないw
個人的に今は、楷書が成立する前の、隷書の面影を残したちょっといびつな書がツボです。

そんな気分で書き初めしましたが、これまた目出たさ雅さとはほど遠い内容w
では、最後にちょっとはおめでたそうな一枚を。

白鳳_3.JPG


こちらは令和の始めの最後の作品。
店頭を飾っております。
こちらで今年の幸せゲットしてくださいませ。

私は今年も地道に描いていきたいと思います。


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2019年12月29日

墨絵アートてぬぐい 白鳳〜奉祝令和

令和元年最後の作品をお収めいたしました。

今年はなんといっても新元号「令和」の始まりの年。
古式ゆかしく行われました大嘗祭の様子はとても素敵でしたね。

そんな特別な年を記念した一枚。
白鳳〜奉祝令和

白鳳_1.jpg

鳳凰は徳の高い王の治世に姿を現すといい伝わる霊鳥。
中国では龍と共に、皇帝の象徴として描かれてきたといいます。
白い鳳凰を、日本を象徴する花「菊」と共に描いてみました。

白鳳_3.JPG

写真では分かりづらいですが、金の柔らかい線で描いた白鳳は、なかなか魅力的に仕上がりました。
手間ひまかかりますが、面白いきら☆やば〜っな手法です。

これまで金ぴかは抵抗あった派なのですが、金に対する感性は、こちらの黄金体験で変わりました。クリムトインパクト。
感想:クリムト展〜ウィーンと日本1900 at豊田市美術館/美しい黄金体験〜名古屋城

振り返りますと、今年はまたとない機会と思い「令和」シリーズを色々描きました。

令和〜梅桃桜2.jpg

墨絵アートてぬぐい〜令和をお迎えする・梅桃桜


令和_銀字2.jpg

令和_金銀文2.jpg

墨絵アートてぬぐい〜令和染め



こちらは、同じく瑞獣の「玄武

玄武_1.jpg

玄武_2.jpg

餅飯殿店.jpg

これで再び四神もそろい踏みです。
墨絵アートてぬぐい〜四神/青龍・白虎・朱雀・玄武


来上がり次第随時お納めしておりますが、手描きですので数に限りがございます、予めご了承ください。

最新作はSNSにて随時お伝えしております。

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墨絵アートてぬぐいにつきまして、詳細は以前の記事をご覧下さい
朱鳥さま 墨絵アートてぬぐいのご案内

月与志|手描き墨絵てぬぐい


ところで、この秋も美術館やお寺へ足を運びました。

【仁和寺観音堂 障壁画】
嵐電・観音電車で話題になっていた、重要文化財・仁和寺観音堂に行ってきました。
「美の巨人たち」で紹介されていた、江戸時代の京都の絵仏師、木村徳応(とくおう)が再建時に描いた障壁画を拝見したくて。奇麗に色が残っている貴重な仏画を心ゆくまで拝んできました。
真言密教の修行の場、普段は非公開、次は二百年後だそうです。

IMG_2323.JPG

【みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術 at京都文化博物館】
スラブ叙事詩以来ひさびさのミュシャ展へ。人気でした。100年経っても古びない、新しいファンを獲得するミュシャの絵の秘密はなんだろう?と考えながら。こちらはまた改めて感想を書きます。

「富野由悠季の世界」展も面白かったです。
早く感想を書きたいのですが、また来年ですね。

こちらは感想書けた分。
感想:流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美 at京都国立博物館

では皆様良いお年を。


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2019年12月03日

感想:流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美 at京都国立博物館

憧れの「王朝美」の世界を堪能しました。
会期は終了しましたが、恒例の感想blogをお届けいたします。

公式特設site→流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美 at京都国立博物館

感想を一言で申しますと「これが雅~MIYABIということか☆」
王朝美の手本として、古の神絵師の御技を学んで参りました。

数ある和の美の系譜の中で、本命本流と私が思う王朝の美(個人的な好みはあるでしょーが)
機会を見つけて学んでいるのですが、絵描きだからといって単に手を動かすだけではだめで。
文化」を知るには博物館に通って本物を見たりと、時間をかけてこつこつ学ばなければ知り得る世界ではないと思っています。

例えば、王朝美ルネサンスの淋派が、江戸期に新たな「歌仙絵」オマージュ作品を創出しているのを拝見、その感性や手法に様々なヒントを頂きました。
展覧会に足を運んだかいがあったというものです。


月夜三人娘_三十六歌仙絵.jpg

さて、今回のイラストも「月夜三姉妹」が登場。
雪美、月美、花美の雪月花三姉妹が、平安時代の女流歌人に扮し、仮名を披露、サインまでつけております。
向かって右より

三十六歌仙絵_雪美.jpg

三輪の山 いかにまち見む 年ふとも たづぬる人も あらじとおもへば 〜伊勢(いせ)by雪美


三十六歌仙絵_花美.jpg

岩橋の 夜の契りも たえぬべし 明くるわびしき 葛城 ( かづらき ) の神 〜小大君(こおおきみ)by花美


三十六歌仙絵_月美.jpg

うぐひすの こゑなかりせば ゆききえぬ 山ざといかで はるをしらまし 〜中務(なかつかさ)by月美


和歌でおなじみ、仮名(かな)は「女手(おんなで)」ともいいまして、万葉仮名を、平安貴族の姫女子たちが洗練させて誕生したといいます。
文化の担い手に女性の感性が加わったこの時代を、とおっってもっきらやばっ☆に描いてみました。

展示にあった後鳥羽院三十六歌仙絵も、佐竹本と比べれば素朴ながら、非常に構成的で面白かったのでこちらも参考に。
※ちなみに佐竹本 伊勢、中務、は今回出展ではありませんでした。

これを描いていたため、記事の更新が遅くなりました。
細かい描写を手間ひまかけて仕上げて行く…これが文字通り「尊い」のだなぁ、と理解したw



■佐竹本三十六歌仙絵

中世に数多く描かれた三十六歌仙絵の中でも、草分け的存在にして最高傑作と名高い「佐竹本三十六歌仙絵
もし切断されていなければ間違いなく国宝級、ということです。

佐竹氏というと、伊達政宗のライバルだった戦国大名が思い浮かびましたが、平安時代から明治まで続く名門だそうで。
その佐竹侯爵家に伝来した「佐竹本」が、ちょうど百年前に売りに出されるも、破格の値段故に買い手がつかず、絵巻は一歌仙ずつに分割され、別々の所有者のもとに秘蔵。
それが100年を迎えるメモリアルイヤーにほぼ全員が一堂に会す、という素敵な展覧会でした。

今から百年前の1919年といいますと…第一次世界大戦が終わり、ドイツでワイマール憲法が制定されバウハウスが設立、ミュシャがスラブ叙事詩の最初のお披露目をし、日本ではカルピスが発売された年(大正8年)、絵巻分断と流転の物語は色々な逸話がありました。

絵を手に入れたのは、鈍翁~DON-OHこと益田孝氏と当時一流の実業家たち。
私がかろうじて知っていたのは逸翁~ITSU-OHこと宝塚の小林一三氏。

持ち主はいずれも数寄者、歌仙たちは新たに表装され、茶会で披露されることで、新しい価値をもって蘇ったという…国宝にはなれなかったけど。
名のある持ち主が所有していた、という来歴が「名物」となる、日本美術の価値感ですね。

※興味があればNHKさんの番組などご覧下さい。ちなみに切ったのではなく絵巻としてもともと繋いであるものを剥がしたのだそうです。


IMG_2148.JPG

さて、展覧会は、本物の歌仙絵を生で拝見出来る又とない機会でした。
会場では流麗に描かれた古筆の魅力に心かきむしられるぐらいでしたが、絵の方は…。
私の見る目はまだまだ「見功者(みごうしゃ)」にほど遠いのでしょう、ぶっちゃけ色あせ古ぼけた絵にしかみられず、我ながら残念至極。
後にNHKの番組「日美」や「歴ヒス」の解説で、佐竹本三十六歌仙絵師の神業、その真の価値を知ることになるのでした。

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■繊細すぎる描写
日曜美術館」の解説で理解しました、まるで歌が聞こえてくるかのように…和歌の心情を巧みに描いた肖像の凄さを。

風が吹いたような、衣服や髪の動き、構成の美しさ…まるでシャッターを切ったかのような、瞬間を切り取る止め絵(平安時代にカメラあった説どうっすかね?)
歌に詠まれた風情を、直接描かず(背景は完全な空白)、描かれた歌人の動き、視線、表情で間接的に表している…という絵の魅力。

描かれたのは洗練された理想の歌仙の肖像、人物の描き分け、個性の表出、心情まで。一人一人違う。
金泥、銀泥、雅な文様の緻密な描写。お顔の繊細すぎる描写、ごく僅かな色彩の表現(白い肌のナチュラルメイクっぷりよ)

今のイラストレーションで完成されている様々な絵師の技が、800年前の鎌倉時代に既に描かれていることに驚きを禁じ得ません。


■古筆の魅力

雅な大和絵は、表現豊かな和様書と共にあってこそ。
会場ではとにかく、白と黒のコントラストが織りなす「和様書」が心地よくてたまりませんでした。

雲母刷りの唐紙の竹桃文様に乗せて、奏でるように走らせた書。
まるで楽器の掛け合いのようなハーモニーです。

平安〜鎌倉初期の古筆は特に、柔らかく優雅で、唐直輸入の奈良時代とも、鎌倉以降の武家文化のそれとも違う。
国風文化が花開いた時代に生まれた、日本独自の美意識の最も濃い所、というか原典がここに。

しかし…変体がなはまだ読めない…読めてもそこからさらに書き手の癖があったり…。
因みに選ばれている和歌はあまり聞いた事ないものばかり。百人一首とは違うんだね…。

古典作品は圧倒的に「書」がかっこいいと思う。
鮮やかで雅な画と、モノクロームの筆跡の組み合わせに心わしずかみにされます。

明治時代に世界標準のアートのフォーマットに仕立て上げられた今の日本画には無い魅力。
中国由来の東洋文化を基盤に、書と画が分け隔て無くあった「大和絵」が好きだ。
だから私はそれを目指そうと思う。


■王朝美ルネッサンス〜淋派

展示の最後で拝見した、鈴木其一の三十六歌仙絵が眼福でした。
歌仙たち三十六人が(会場で数えた)一枚絵にわんさか収まって、雅というよりなんだか愉快。
中国の仙人絵のような…酔ってこそいないが、和気あいあいで楽しそう。
倣:緒方光淋…とあったから淋派の画題なのかしらん。

目を引いたのが、歌仙の黒い衣装をたらしこみで再現している所。
古い大和絵の色の劣化が、場合によれば味わい深い美の要素として感じられる…そういった事なんでしょうね。憎い演出です。

古美術好きなら「わかる」淋派ってマニア度高すぎぢゃんね(マーちゃん風に)と思ってたら、その上を行く、後世に作られた佐竹本三十六歌仙絵模本は、紙面のシミまで忠実に再現、ここまでやる古美術マニア最強すぎでしょ。

私もまだまだ見識も感性も足りませんが、こつこつ描いていきますよ。

青竜_02.JPG

月与志墨絵

水墨白虎_02.jpg

墨絵アートてぬぐい〜四神/青龍・白虎・朱雀・玄武


■海外流出する美術

佐竹本三十六歌仙絵が分割された理由に、当時、古美術海外流出が盛んだった事があるようです。
最近でもよく「里帰り」している水墨画の名品や浮世絵など、この時期に海を渡ったものが多いとか。

現在の日本文化の最先鋒のひとつ、漫画・アニメが同じ道を辿りつつあるような話を聞きます。

国の文化美術が流出する、というとまずい事のように思いますが、必ずしもそうではなく、時流の変化で日本で無価値とされたものでも、海外の理解あるコレクターがそれを保護して後世に伝えてくれる事もあるのです。
例えば中国で失われた文化美術が、台湾や日本に伝わって残っていたり。その逆もあるのでしょうね。

このお話、詳しくは、次の記事で。


あいかわらずとりとめのない雑感で申し訳ありません。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。

この次は、久々のサブカルチャー記事の予定、「富野由悠季の世界」展に行ってきました。
ご期待ください。スペース・ラナウェイ!


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